■私たちに身近な生物多様性(29)[坂本 優]

ハクセキレイは大都市の市街地や公園でもよく見かける白黒ツートンカラーのセキレイだ。
日本にすむハクセキレイは世界中に分布するタイリクハクセキレイの1亜種とされる。セキレイ界の覇者の一翼を担い、日本でも勢力を広げている。
私は東京板橋区に住んでいるが、区内全域で観察できる。中でも石神井川の周辺では特に観察頻度が高い。ちなみに板橋区の「区の鳥」はハクセキレイだ。
「区の鳥」だけあって幅を利かせているのか、あるいはコンクリート護岸によく響くからか、石神井川沿いを散歩しているとハクセキレイの比較的大きな、「チュ、チュ」「チ、チチチ」といった鳴き声が頻繁に聞こえる。
川沿いを長く滑空するときは、よく通る「キッキッキッ」という声をあげることもしばしばある。草むらを歩いていると突然足元から跳びだして「キチキチキチ」と鳴く通称「キチキチバッタ」がいるが、テンポや響きから、私はそのバッタの声を思い出してしまう。
そうかと思えば、電線などにとまって伸びやかにさえずっていることもある。姿からも声からも見つけやすい野鳥だ。
日本列島では、かつて北海道や東北中心に生息・繁殖していると言われていたが、特にこの半世紀の間で全国的に分布を広げている。
温暖化の影響というよりも、開発や都市化に適応して勢力を拡大したと言われている。
セグロセキレイ