◆オルタナ本誌 連載「世界のエコホテル巡礼」(57号)から

宿泊施設全景と水盤。ここに観賞用の稲が植え付けされ、秋には黄金色に輝く実りの時期を迎える
山形県鶴岡市の郊外に、バイオベンチャーを担う頭脳集団の集まる「サイエンスパーク」がある。田園風景の真ん中に生まれたその一画には、建築家・坂茂氏デザインによる、穏やかで美しい建物の滞在型宿泊施設「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」が建つ。
2018年9月の開業時には、周囲を水盤のような田園が囲み、建物や、刻々と色を変える夕焼け空が水盤(地下水)に映し出され、情景は訪れる者を魅了していた。
令和となったこの5月、施設内の水盤には観賞用稲を植える作業が同月中旬に実施された。秋には、坂茂氏や関係者全員が当初から思い描いていた通り、水盤は豊かに実る黄金色の稲穂に輝き、情景は一変するに違いない。
宿泊施設は、遠目には平屋のように見えるが、美しい低層2階建てだ。陽当たりのいい2階には、全面ガラス張りのレストラン、ライブラリ、ショップが造られ、客室棟と天然温泉大浴場が通路でつながれている。客室も基礎以外は木造で、館内には、坂茂氏のアイコンである丸い「紙管」が随所に使われ、椅子もベンチも、ベッドのボードも紙管製だ。自然と共にある環境に負荷をかけない精神がこの施設の流儀としてある。
※この続きは、オルタナ57号(全国書店で発売中)掲載の連載「世界のエコホテル巡礼」をご覧ください。

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのアドバイザー、コンサルタントも。著書多数。公式サイト:www.kyokosekine.com