「児童養護施設×里山保全」でふるさとづくり

環境・社会課題における優れた取り組みを表彰する「グッドライフアワード」第8回(主催・環境省)の受賞者が決まり、12月5日に都内で表彰式が開かれた。環境大臣賞最優秀賞にはNPO法人東京里山開拓団(東京都八王子市、堀崎茂代表)による「荒れた山林を児童養護施設の子どもたちと伐り拓いて里山づくり」が選ばれた。(オルタナ副編集長=吉田 広子)

環境大臣賞最優秀賞を受賞したNPO法人東京里山開拓団=12月5日、東京・渋谷で

環境大臣賞最優秀賞に選ばれた東京里山開拓団は、荒れてしまった山林を児童養護施設の子どもたちとともに再生することで里山保全と児童福祉を両立した活動を展開。これまで9年間で3つの施設と協働し、400人の子どもたちが参加した。活動方針は「よりたくましく、よりすこやかに」だ。

同NPOの堀崎代表は、東京への転勤を機に15年ほど前から荒れた山林に通い始めた。「里山の価値は何か。そう考えたとき、心を開く力があるのではないかと考えた。慣れない東京での暮らしのなかで、自分にとっても里山が心の拠り所になっていった」と明かす。

「全国には、所有者不明の荒れた山林が300万ヘクタールもある。児童養護施設で暮らす児童は3万人にも上る。一見関係ないように見える2つの課題だが、子どもたちと一緒に荒れた里山を開拓し、ツリーハウスや料理をつくることで、『ふるさと』になる」

受賞の喜びを話した堀崎代表

このほか、環境大臣賞優秀賞として、生ごみ循環でまちを元気にすることを目指す大木町(福岡県)、小中学生が1年間の共同生活を行う、暮らしの学校を運営するNPO法人グリーンウッド自然体験教育センター(長野県泰阜村)、地元の自然栽培の野菜を買い切って流通させる、創業100年の八百屋・カネマツ物産(長野市)が選ばれた。

中井徳太郎・環境事務次官は「『みんなの力で社会を変える』ことをコンセプトに『グッドライフアワード』が始まった。世界はいまコロナ禍と気候危機という2つの危機に直面している。『ライフスタイルイノベーション』、つまり一人ひとりの行動を変えていくことで、持続可能な社会の実現に向けて環境や社会の課題を解決していきたい」と話した。

「第8回グッドライフアワード」受賞者は次の通り。

◆環境大臣賞 最優秀賞:NPO法人東京里山開拓団(東京都)
・荒れた山林を児童養護施設の子どもたちと伐り拓いて里山づくり~自らの力でふるさとを創り上げる試み~

◆環境大臣賞 優秀賞
大木町(福岡県)
・次世代へとつなぐ循環の環(わ)~生ごみ循環でまちを元気に~
NPO法人グリーンウッド自然体験教育センター(長野県)
・山村の暮らしを教育財に「暮らしの学校だいだらぼっち」の実践
有限会社カネマツ物産とカネマツ倶楽部有志(長野県)
・「創業100年の八百屋、野菜のカネマツSDGsプロジェクト~信州松代から、地球の恵み、自然栽培の野菜を細胞に届けます~」

◆環境大臣賞 各部門
<NPO・任意団体部門>
mymizu (一般社団法人Social Innovation Japan)(全国)
・mymizu:使い捨てプラスチック消費を減らすことをはじめ、持続可能なライフスタイルを簡単に、楽しく!
一般社団法人里海イニシアティブ(神奈川県)
・ジェットコースターが見える大都会横浜は金沢漁港で、森林の5倍のCO2を吸収する昆布の養殖に挑む!
社会福祉法人さんさん山城(京都府)
・農福連携で地産地消、廃棄ゼロ。

<自治体部門>
さいたま市(埼玉県)
・平時の低炭素化と災害時のレジリエンスに貢献する「スマートホーム・コミュニティ」

<学校部門>
econnect project(福岡県)
・「私たちも社会に貢献することができる!」障害を持っている子ども達が社会貢献を通して世界中に笑顔を届ける「econnect project」

<地球コミュニティ部門>
太陽住建場所(神奈川県)
・空き家× 太陽光発電から始まる地域循環共生圏

◆サステナブルデザイン賞
株式会社チェンジ・ザ・ワールド(全国)
・スマホで少額から太陽光発電所を購入できるWebサービス「CHANGE(チェンジ)」の開発・運営
コープデリ生活協同組合連合会(沖縄県、新潟県、岩手県、関東他、アフリカ)
・地域とともに、商品を通じて持続可能な社会をめざす「4つのプロジェクト」
神奈川県(神奈川県)
・全国初!太陽光発電設備の共同購入で、安価に設置を実現!

◆子どもと親子のエコ未来賞
一般社団法人日本伝統野菜推進協会(愛知県など)
・伝統野菜の食農教育で創る子ども達の「グッドライフ」な未来
緑のリサイクルヘシャルエコプロジェクトチーム(徳島県)
・環境問題を学ぶ高校生・大学生だからできる東日本大震災に向けたオンリーワンの復興支援活動
ヤマハ発動機株式会社(セネガル)
・紙芝居による「安全な水」の利用啓発プロジェクト

◆エシカル賞
京都府与謝野町(京都府与謝野町)
・廃棄される素材を生かしてそのまま肥料に「100%有機質・京の豆っこ肥料」
TJグループホールディングス株式会社(大阪府など)
・地域から地域へ〜木質資源の地産地消
株式会社CRAZY KITCHEN(東京都)
・フードロスや環境保全を意識したケータリングサービスSUSTAINABLE COLLECTION(サステナブルコレクション)

◆環境と福祉賞
有限会社ウイルパワー(岡山県・香川県)
・廃棄資源を環境・社会・経済に役立てる越境循環システム
株式会社就労支援ラボラトリー(全国)
・自立支援を目指す!!福祉×企業の共同事業オリジナルブランド・リサイクルトナー普及プロジェクト
NPO 法人かわごえ里山イニシアチブ(埼玉県川越市福田(北部)農村地域)
・環境豊かな都会型農村を目指し、地域と連携して環境保全型農法に取組む『生きもの育む田んぼプロジェクト』

◆環境地域ブランディング賞
サステナブル・ラボ株式会社(全国)
・SDGsにモノサシを!~SDGsの「見える化」で環境や社会に優しい未来を創るプロジェクト~
⼀般社団法人GOOD ON ROOFS(全国)
・太陽光事業の新プラットフォームブランド
株式会社ムスカ(全国)
・ハエの力で持続可能な循環型社会を創造する”ムスカシステム”

◆森里川海賞
株式会社 BEATICE(神奈川県など)
・日本の原風景「棚田」の魅力を、地域とからだに優しいアイスと共に届ける【棚田アイス】
株式会社アズマ(福岡県八女市)
・『エネルギーの地域完全直接利用型の太陽光発電システム』
国立大学法人電気通信大学場所(東京都調布市)
・都市の空に緑を広げるスマート農業

◆環境社会イノベーション賞
株式会社丸金(長野県から全国へ)
・日本発、人と地球を健康にする持続可能農業「木の子えのき」
佐藤世壱(大分県臼杵市)
・中学生の挑戦!地域の困ったをSDGsの視点で解決。ジブンゴトの場をつくる100年目指せ学校林プロジェクト!
大栄環境株式会社(関西・東海・関東・北海道)
・“2000人のSDGs”「環境ラリー」でSDGsを“自分事”に

◆環境アート&デザイン賞
日本テレビ放送網株式会社「所さんの目がテン!」(茨城県常陸太田市)
・日本テレビ番組「所さんの目がテン!」企画「かがくの里」における、里山再生の取り組みと放送による発信
トヨタ自動車株式会社(全国)
・ふく射をコントロールすることで実現する省エネ+安心・安全・健康な街づくり~床ふく射冷暖房を中心とした提案活動~
般社団法人BRIDGE KUMAMOTO(熊本県など)
・クリエイティブの力で社会課題に挑む|BRIDGE KUMAMOTO

◆SDGsビジネス賞
一般社団法人グリーンクリエイティブいなべ(三重県いなべ市)
・グリーンクリエイティブいなべ~グリーンインフラ商業施設「にぎわいの森」から、カジュアルなSDGs 推進~
株式会社東急パワーサプライ(東急線沿線を中心とした首都圏エリア)
・再エネを活用した環境に優しい地域づくりへの取組み
トヨタ自動車株式会社(日本・世界各地)
・人と自然が共生するトヨタの未来づくり−ToyotaGreenWaveProjectー

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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