【連載】論考・サーキュラーエコノミー
あれは日韓共同開催FIFAワールドカップのあった年だから2002年のことだ。私の前任校である慶應義塾大学の三田キャンパスにカルロス・ゴーンがやって来た。学生・教職員の前で講演するためである。講演用の巨大教室でも立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。(細田 衛士=慶応義塾大学経済学部教授)
講演が終わり質疑の時間になった時、学生の一人が流暢な英語で日産のエコカー対策について質問した。
ゴーンの答えはズバリ、「消費者は環境にはお金を払わない!」の一言。その時は「なるほど、そんなものか」と思ったが、プリウスが大流行りになったこともあり、やはりこの答えはどこか胸に引っかかっていた。
その10年後、私の指導する学生の一人がこの問題に経済学的観点から挑戦した。人々が車を買う時、環境性能に対してより多く支払うかどうか計量経済学的に解析したのである。
その結果、なんとハイブリッド車や電気自動車などのエコカーには同性能のガソリン車よりも20万円程度余計に支払っているという解析結果になったのだ。
これはエコカーの燃料消費の節約による経済的メリットを差し引いた上での結果だ。