「One Health」がパンデミックから人類を守る

One Healthの歴史を振り返る。1970年から1980年代にかけて、環境保全のための⽣物学が⼤きく展開を⾒せ、「⽣物多様性」という⽤語が誕⽣した。⽣物多様性を保全するための医学領域として、「保全医学」が2000年初頭に誕⽣した。保全医学は、ヒトの健康、動物の健康、⽣態系の健康の相互関係を意味する。

個々の病気を対象にしても根本治療にならないこと、そして⽣態系が健全でなければ個々の健康は成⽴しないことが認識された。「保全医学」が One Health の誕⽣と深く関わっている。

野⽣動物衛⽣の先進国である米国では、アヒルペスト(アヒル腸炎)による4万羽のマガモの死亡を契機に1975年国立野生動物衛生研究所(NWHC)が設立された。

野⽣動物の感染症に注意を払うのは、動物衛⽣のみならず国⺠の健康、さらには国家安全保障に係ると認識しているからだ。野⽣動物の存在そのものに価値がある(⾮利⽤価値)はずだが、⼈間は⾃らの利益にしか思いが⾄らない傾向にある。

コロナ禍で敵視されているコウモリは、⼀晩で蚊などの昆⾍を12,000匹も⾷べている。病気を媒介する蚊を駆除する殺⾍剤の役割を毎晩果たしている。

今こそ⾝近な⾃然や⾜元の環境を⾒詰め直し、健全な⽣態系を復元する最期の機会である。One Health が実現されなければ、私たち⼈類の⽣存⾃体が危ない。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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