「沈黙は暗黙の同意、笑うのは共犯」:識者5人に聞く

■「沈黙は暗黙の同意、笑うのは共犯」
 上野千鶴子氏(社会学者)  

この問題の論点は、4つあります。一つは、意思決定プロセスの問題です。民主主義は意思決定コストの高いシステムです。(会議が)長いことが悪と考えることは、民主的な意思決定に関して理解がないと宣言しているようなものです。おそらく、彼自身が関わってきた会議が、忖度と根回しで成り立ったおかげで短時間で済んできたのでしょう。

二つ目の論点は、根拠のないジェンダーステレオタイピングです。「女は話が長い」、「競争意識が強い」ということを実証したデータはありません。

三つ目は、抑圧効果です。彼の発言は、女はわきまえて口をきけよという抑制効果があります。それを逆手にとってSNSでは「#わきまえない女」というハッシュタグも生まれました。数だけそろえても「わきまえて」ふるまう女ばかりなら、いくら女性を登用しても意味がありません。

最後の論点は、スポーツ界にはらむ利権体質をあぶりだしたことです。この発言に関して、現役のアスリートは取材に応じないし、発言もしていません。もちろん、この4つの論点以外にも、彼の発言に関して、笑ったり、沈黙したりする周囲も問題です。

沈黙は暗黙の同意を意味しますし、笑うことは共犯を意味します。森会長個人の問題ではなく、組織委の組織体質そのものが問題になるでしょう。
上野千鶴子さんへのインタビューから抜粋

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #ジェンダー/DE&I

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