ワイガヤで集まる「環境寄り合い所」、都が推進

【連載】小林光のエコめがね(3)

若い人がワイガヤで参加する、ポストコロナのスタイルの環境寄り合い所ができそうだ。東京都の肝入りで、形が見え始めたアイディアマッチングの場が今後成長していくよう期待する。読者の皆様にも是非ご参加をお願いしたい。

小林光のエコめがね

東京都では、かねて募集していた「ゼロエミ・アクション・ムーブメントの社会浸透取り組み」の事業内容とそうした提案を実行する団体を決めた。この事業は、2020年10月に、事業内容のアイデア選定を兼ねて事業実行団体の公募が行われていた。事業の趣旨は、市民と企業が連携して、2050年脱炭素を果たせるムーブメントを起こすことである。

東京都からの支援は初年度のわずか500万円で、使い道も団体内部の人件費などには充てられず、いかにも公費らしい使い勝手の悪い資金だが、それでも多くの団体が馳せ参じたようだ。結果、二つの事業が採択された。

一つは、三菱地所レジデンス社等2社が、その販売するマンションに入居するご家庭に対して、省エネ節電などをサポートする環境家計簿を提示し、その記入結果を会社にフィードバックして、マンションの環境品質を改善していく、循環的なメカニズムを作るものである。住生活に焦点を絞った連携事業である。

そしてもう一つは、小宮山宏先生(三菱総研研究所長、第28代東大総長)を委員長とするサスティナブル・ライフスタイル実行委員会の提案した事業である。こちらは、カバーする範囲が逆に極めて広い連携事業だ。私も副委員長として参加しているので、以下に、詳細を紹介したい。

サイバー空間上に3つの「出会いの場」

応募時の事業名は、「ゼロエミ・アクション2050連携プラットホーム」というもので、内容的には、3つの出会いの場を、サイバー空間上に設けるものである。

一つは、市民や専門家の持つファクトを入手する学びの場。もう一つが、企業が発信する場で、自慢の環境製品やサービスを、工夫を凝らして説得的に、そして、標準的な透明な枠組みに準拠して消費者・生活者にアピールする場である。そして最後が、市民と企業の出会いの場である。

この最後の出会いの場では、資金、人材、知見はあるが、市民生活に取り入れてもらえるようなアイデアの一押しに欠ける企業、金融機関、自治体などの組織が、その悩みを登録することができ、他方で、脱炭素に役立つ行動や商品・サービスに関してアイデアがある個人や学生、NGOなどが、その一端を示したり、あるいは悩みに応じて個別にアイデアを提供したりといったことができるサイバー空間である。

この3番目の場は、それ自体が商業的なマッチングサービスとしても成り立っているが、ここはその前の段階を考えていて、ワイガヤの楽しい場所になることが期待されている。

このような3つの場からなる事業全体の開始は、来年度からであるが、この2月24日に、プレ・キックイベントとして、このプラットホームの名づけ祭りがネット上で催された。コロナ禍のせいで、遠隔的に行うお祭りもうまくなったものだと感心して視聴していたが、投票の結果、Do-Nuts Tokyoといった塩梅の名前が最高点を獲得した。

意味は、わけのわからない面白いことをやってやろう、という英語表現とのことだが、もう一つ、地球の生命維持能力の範囲をドーナッツに喩えて、そののりを超えないようにと説く、ドーナッツ経済学にもあやかっているようだった。最近の若い人が、環境保全を、いい子ちゃんぶった建前と取らずに、頭や行動力や腕を試す面白いフィールドと思ってくれるなら、嬉しい限りだ。

本欄初回にも申し上げたが、連携協力が新価値創造の源だと思う。このプラットホームの動きも折に触れて紹介したいが、是非、皆さまの応援もお願いしたい。

hikaru

小林 光(東大先端科学技術研究センター研究顧問)

1949年、東京生まれ。73年、慶應義塾大学経済学部を卒業し、環境庁入庁。環境管理局長、地球環境局長、事務次官を歴任し、2011年退官。以降、慶應SFCや東大駒場、米国ノースセントラル・カレッジなどで教鞭を執る。社会人として、東大都市工学科修了、工学博士。上場企業の社外取締役やエコ賃貸施主として経営にも携わる

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キーワード: #SDGs#環境

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