難しい立場にあるのが日本政府です。歴史を振り返ると、最後は抗日に転じましたが、日本占領下の海南島で軍事訓練を受けたアウン・サン、ネ・ウインらが日本軍とともに独立軍を率いて英軍と戦ったのは有名な話です。そんなこともあり、インパール作戦で負傷し、生死をさまよった日本兵をかくまってくれました。
独立後、軍事政権となり国際的に孤立したミャンマーを日本は政府開発援助(ODA)で支えてきました。そうした経緯もあり、日本は国軍を批判しつつも対話の余地を探るというあいまいな態度をとっています。
ミャンマー語が堪能で現地での評判の良い丸山市郎・駐ミャンマー大使が、国軍にパイプを持つ強みを生かして、国軍が「外相」に指名したワナ・マウン・ルウィン氏にいち早く会い、民主的な体制の早期回復を要求しました。そこまではよかったのですが、大使館が「ワナ・マウン・ルウィン外相」と表記したことで、ミャンマー国内で反発が広がりました。「日本政府の弱気な態度に失望」「ワナ・マウン・ルウィン氏が外相とは誰も認めていない」と厳しく批判されてしまったのです。
ミャンマーの国軍関係の制裁に踏み切った米国と欧州連合(EU)。軍事政権への批判を強め、国防交流や武器など軍事物資の輸出を中断すると発表しただけでなく、開発協力事業も見直すとしている韓国。市民はこうした国々の動きを好感を持って受け止めています。
半面で日本に対しては「ミャンマーは親日国なのに」と期待感が不信感に変わる気配も現れているようにも見えます。圧力を加えることでミャンマーを、拡張主義を続ける中国寄りに追いやりたくないという思惑があるのでしょうが、果たして結果は吉と出るのでしょうか。
SDGs標ぼうの企業はどうする?
SNSの普及と並び現代が手に入れた企業理念としてSDGsと人権意識の高まりがあります。平和裏に行われているデモに対し銃口を向け殺害行為を繰り返し、2400人を不当に拘束するという時代錯誤な国軍に対し、企業はどう向き合うべきなのでしょう。
ミャンマーは経済成長が期待できる東南アジアでは最後の大型市場とあって日本の進出企業は2020年末で433社。新型コロナが広がる前は3000人の駐在員や家族など邦人が住んでいました。コロナ禍で800人に激減。そこで起きた今回のクーデターで100人にまで減っています。
企業の活動についても、スズキや現代自動車に対抗して2月に55億円を投じ完成した新工場の稼働を予定していたトヨタ自動車が稼働を延期したほか、CDM(市民不服従運動)による従業員の職場放棄の影響でデンソー、ヤクルトなどが操業停止に追い込まれています。ファーストリテイリングの取引先工場も中国企業と一緒に放火されました。
ヤンゴンの民間団体「責任あるビジネスのためのミャンマーセンター」(MCRB)が呼び掛けている、クーデターへの懸念を示す共同声明には米コカ・コーラ、仏タトルと並んで日本のクボタや大塚製薬が賛同し署名しています。
欧州のファストファッションのブランド企業は、従業員が解雇の不安なく抗議行動をとれることを表明するよう求められています。