「絶滅危惧種を守りたい」から始まった社会貢献

ホホジロザメやウーパールーパー、ジャイアントパンダといった絶滅危惧種の動物を守るため、絶滅危惧動物のイラストを描いた缶バッチを販売し、出た利益をWWF(世界自然保護基金)に寄付している小学6年生がいる。京都府京都市在住の吉武諒人(よしたけ りょうと)さんだ。現在は、『絶滅危惧種大図鑑』の制作を進めている吉武さんに、なぜこのような活動を始めたのか、話を聞いた。(三原 菜央=スマイルバトン代表)

1年間に4万種以上の生物が絶滅している

京都府京都市在住の小学6年生の吉武諒人さんは、ホホジロザメやウーパールーパー、ジャイアントパンダといった絶滅危惧種の動物を守るため、絶滅危惧動物のイラストを描いた缶バッチを販売し、出た利益をWWF(世界自然保護基金)に寄付している。缶バッチの制作・販売からスタートし、現在は『絶滅危惧種大図鑑』の制作を進めている。

100ページ超えの超大作には、絶滅危惧種の名前や減少原因、絶滅を防ぐためにできることや、その生物の生態に関する情報が掲載されている。なぜこのような活動を始めたのか。「もともと小さい頃から生き物が好きで、好きな生き物が減っていることを知り、守らないといけないと思いました」。

実際に販売した缶バッチ

生き物が大好きだった吉武さんは、小学2年生の頃から夏休みの自由研究を利用して生き物について調べるうちに、絶滅寸前の生き物が増えていることを知る。

「生き物の絶滅スピードは、本来1,000年に1種類ずつらしいんです。2億年ぐらい前の恐竜がいた時代はそうだったみたい。それが最近では、1年間に4万種以上の生物が絶滅しているとされています。だから明らかに多すぎるんですよ。人間が今のままの生活を続けていると、そう遠くない未来に、地球上からほとんどの生物が消えてしまうかもしれない。だから、絶滅危惧種の存在を知ってもらいたくて、活動をしています」

皆が生き物について考える機会を増やしたい

ハムスターやウーパールーパーといったペットとして飼育されることの多い、私たちに馴染みのある動物も絶滅の危機に瀕しているという。

「ゴールデンハムスターも、今ペットショップで売っているのは1匹のメスと、その子どもの子孫らしいんですよ。野生では、日本の四国ほどの大きさの面積にしか生息していません。ペットとしてたくさん繁殖できるから大丈夫ではなくて、野生の方も守っていきたいと思っています」

この活動を通して、うれしかったことについても聞いてみた。「うれしかったことは、まずWWFという自然保護団体に、缶バッチの販売で得た利益の4,000円を寄付することができたことです。あとは、今制作している絶滅危惧種大図鑑が完成形に近づいてきたこと。僕がほしいのはお金ではなくて、生き物が増えたりとか、皆が生き物について考える機会を増やすことです。たまたま4年生のときの先生が、僕の取り組みを発表する時間を設けてくれたんですが、5年生になってからも、意外と皆がその発表の内容を覚えてくれているので、あのときの成果はかなり大きかったと思います」。

吉武さんのインタビューは、終始生き物への愛と敬意にあふれていたが、「社会に貢献したい」と何度も強く語る吉武さんの姿も印象に残っている。

「僕は生き物が好きで、絶滅危惧種の問題は見過ごせないから、そこを自然な状態に戻していきたい。生き物が絶滅すれば、人も絶滅する可能性がある。だから生き物は絶対に守らないといけないし、人が絶滅するから守らないといけないのではなくて、癒しや森林の意義だとか、そういう意味でも生き物は大切になってくるので、絶対に絶滅させてはいけないと思います。大人になっても生き物を守ったり、生き物の大切さを皆に知ってもらうための活動をしていきたいな、と思っていますね」

mihara

三原 菜央(スマイルバトン)

株式会社スマイルバトン 代表取締役/iU客員教員 1984年岐阜県出身。大学卒業後、8年間専門学校・大学の教員をしながら学校広報に携わる。その後ベンチャー企業を経て、株式会社リクルートライフスタイルにて広報PRや企画職に従事。「先生と子ども、両者の人生を豊かにする」ことをミッションに掲げる『先生の学校』を、2016年9月に立ち上げる。2020年3月にボーダレス・ジャパンに参画し、株式会社スマイルバトンを創業。著書に「自分らしく働く パラレルキャリアのつくり方(秀和システム)」がある。執筆記事一覧

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キーワード: #生物多様性

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