KEENが「脱フッ素」技術を公開、他社にも呼び掛け

アウトドア・フットウェアメーカーのKEEN(米オレゴン州ポートランド)は4月2日、製品の撥水加工工程から有害化学物質の「有機フッ素化合物(PFCs)」を排除する新たな製造技術「GREEN PAPER」を開発し、同業他社も使えるよう公開した。(山口勉)

PFCsからの脱却を目指す

KEENは2012年から「Detox the Planetイニシアティブ」をスタート。今年4月、地球環境について考え、ともにアクションを起こし、環境保護を呼び掛ける「Detox the Planet」月間を実施した。今回のアクションはその第一弾だ。アウトドア・フットウェア業界に対し、2025年までにPFC-FREEの実現を呼びかける。

撥水加工はアウトドア業界では必須の機能であり、PFCsが一般的によく使用される。PFCsは、約5,000種のフッ素化合物の総称で、自然界で分解されにくいことから「フォーエバーケミカル(永遠の化学物質)」とも呼ばれる。

PFCsは水や油、汚れなどに高い耐性がある。このためアウトドア用品以外でも衣類や家具、食品包装、調理器の焦げ付き防止コーティングなどにも使用されるが、使用を通じて少しずつ環境中に排出されていく。

さらにはPFCsは環境中に残留し、食物連鎖にも入り込んでしまう。環境や人間の健康に害を及ぼすことが判明しているこのPFCsは、エベレストのベースキャンプからヒトの母乳まで、幅広い生態系の中で見つかっている。

KEENは環境負荷を最小限にした製品づくりを積極的に行なっており、製品の撥水加工にPFCsを使用しない製造技術の開発に取り組んできた。

PFCs不使用の撥水加工を実現

米KEENのエリック・バーバンク・ジェネラル・マネージャーは、今回の技術について「私たちは7年にわたり、性能で妥協することなく製品からPFCsを排除するためのプロセスを研究、開発、改良してきた。現在、KEENフットウェアの95%以上でPFC-FREEを実現し、PFC-FREEでの撥水効果も実証済みだ」と話した。

技術の公開については「サプライチェーンと製品からPFCsを排除することにより、これまで180トンものPFCsを削減することができた。他ブランドも一日も早くPFC-FREEを実現できるよう、KEENの取り組みを共有していければと考えた」という。

市場価値の高い自社技術を公開することは珍しい。KEENは、本来であれば自社にとって競争優位に働く技術を、社会資産としての価値を優先させ、公開したという。

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山口 勉(オルタナ副編集長)

大手IT企業や制作会社で販促・ウェブマーケティングに携わった後独立。オルタナライターを経て2021年10月から現職。2008年から3年間自転車活用を推進するNPO法人グリーンペダル(現在は解散)で事務局長/理事を務める。米国留学中に写真を学びフォトグラファーとしても活動する。 執筆記事一覧

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