PRIが求める「1.5℃目標に沿った投資方法」とは

投資家イニシアティブ「責任投資原則(PRI)」から「リーダーズグループ2020」と評価されているアクサIMは、「気候目標に整合した投資原則:1.5℃目標に沿った投資方法」と呼ぶ10のアプローチを実践している。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

投資家イニシアティブ「責任投資原則(PRI)」は投資家に対し、企業分析・評価を行う上で長期的な視点を重視し、ESG情報を考慮した投資行動をとることを求めている。

PRIは、運用会社20社とアセットオーナー16機関の気候変動関連リスクの情報開示と責任ある投資活動を評価し、「リーダーズグループ2020」として発表している。

PRIによると、運用会社20社の特徴は以下の通りだ。

1,気候関連問題のための強固なガバナンス構造
2,異なる時間軸での気候リスクと機会の分析
3,気候関連リスクの総合的リスク管理方針への統合
4,短期、長期の目標設定

その1社であるフランスの大手生命保険会社アクサの運用子会社アクサ・インベストメント・マネージャーズ(アクサIM)は、「気候目標に整合した投資原則:1.5℃目標に沿った投資方法」と呼ぶ10のアプローチを実践している。

【ポートフォリオ配分視点】

1.パリ協定の目標に整合する各業界の低炭素リーダーに加え、移行期にある企業にも積極的な投資配分を行う。

2.一定割合の資金をグリーン企業や気候ソリューショ ンに配分することにより、エネルギー移行と低炭素化へ関与する。

【発行体の選択視点】

3.低炭素リーダーすなわちカーボンフットプリントが既に低い企業や、業界最高水準の気候・環境パフォ ーマンスを誇る企業を特定する。

4.移行期リーダーすなわち炭素排出量削減実績に優れた企業や、測定可能な目標を掲げて改善への道筋を正式に表明している企業を特定する。

5.グリーンリーダーすなわち風力エネルギーや蓄電ソリューションなど「環境に優しい」製品やサービスの開発を通じて、気候変動の緩和を実現している企業やプロジェクトを特定する。

【気候関連KPIのモニタリング視点】

6.将来の炭素排出量削減の可能性つまり科学に基づく排出経路に整合しているか否かを考慮し、現行ポートフォリオのカーボンフットプリントを削減する。

7.移行の支援に必要な気候変動と関わりが深いセクターへの投資額を維持する。

8.適切なタクソノミーを用いて、グリーン企業と気候ソリューションへの投資額をモニタリングする。

9.気温や低炭素化実績など、ポートフォリオと発行体のフォワードルッキングな気候関連KPIをモニタリングする。

10.全体的なESG(環境・社会・ガバナン ス)パフォーマンスと気候関連の最低基準を含む気候パフォーマンスをモニタリングする。

同社はパリ協定の目標達成に向けた投資は、「新しい製品やサービスを通じて気候の移行を可能にする機会」もしくは「地球温暖化を産業革命以前と比べて1.5℃以内に抑えるために気候科学が要求する水準に近い急速なペースで脱炭素化を進めている企業」に重点を置く必要があると強調している。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #ESG投資

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