「女性活躍」に違和感を感じるのはなぜか

筆者はいまだに女性活躍というワードに違和感がある。男性目線が強く、そもそも女性は活躍できていない、というネガティブなコンテクストが垣間見えるからだ。ここ数年だけでも時代は変わったので、「女性活躍に積極的な企業」ではなく「ジェンダーバランスの優れた企業」という表現でよいのではないか。(安藤 光展)

3月、経済産業省から令和2年度「なでしこ銘柄」選定企業が発表された。なでしこ銘柄は「女性活躍推進」に優れた上場企業を、中長期の企業価値向上を重視する投資家にとって魅力ある銘柄として紹介することを通じて、企業への投資を促進し、各社の取組を加速化していくことを狙いとしている。

女性活躍推進。このワードからどんなイメージが思い浮かぶだろうか。いわゆるウーマン・エンパワーメントやジェンダー平等の文脈で使われているが、女性活躍は人によって大きく定義が異なる単語の一つであり、広く共通の認識が進んでいるとはいえないのが現状だろう。

しかし、認識がどうであれ、ステークホルダーが企業に女性活躍を推進するようプレシャーをかけている側面もある。たとえば内閣府「機関投資家が評価する企業の女性活躍推進と情報開示」によれば、機関投資家の7割が女性活躍情報を活用しているとされ、投資家サイドの注目度も高くなっているのは間違いない。

しかし、筆者はいまだに女性活躍というワードに違和感がある。男性目線が強く、そもそも女性は活躍できていない、というネガティブなコンテクストが垣間見えるからだ。

ここ数年だけでも時代は変わったので、「女性活躍に積極的な企業」ではなく「ジェンダーバランスの優れた企業」という表現でよいのではないか。もしくは、性別に焦点をあてず、単純に「働きやすい会社」などでもよいだろう。本来的にいえば、ダイバーシティ推進は公平性も求められるため、女性だけではなく、男性も、障害者も外国人も、みんなが活躍する組織/企業であるべきだ。

昨今は無性別表現が注目されている。たとえば「Ladies and Gentlemen」という航空機内やエンターテイメント施設での呼びかけは「Everyone」などに変更するという話題も見聞きする。ジェンダー・ニュートラル時代の女性活躍推進に相応しい表現の登場を期待し今後も注目したい。

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安藤 光展・CSRコンサルタント

CSRコンサルタント。専門は、CSR、SDGs、サステナビリティ情報開示。著書は『創発型責任経営』(日本経済新聞出版、共著)ほか多数。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。ネット系広告会社などを経て2008年に独立し、現在は一般社団法人CSRコミュニケーション協会・代表理事。1981年長野県生まれ。執筆記事一覧

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キーワード: #ジェンダー/DE&I

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