サーキュラーエコノミーを実現させる難しさ

多様で健康的なファッションの未来を考える(6)

サーキュラーシステム実現に向けて、今できることとこれからの課題をステークホルダーごとに考えてみる。どれくらい先の未来に完全な100%循環型ファッションシステムが作られるのだろうか。(一般社団法人unisteps共同代表=竹村 伊央)

一日で焼却・埋め立てられる衣類は1300トン

今後のサステナブルなファッションを考える上で循環システムの構築が必要と前回のコラムでも書かせていただいたが、今回はそのサーキュラーエコノミーの実現について考えてみようと思う。

サーキュラーエコノミーとは作って使って終わりではなく、作り直すことまで視野に入れた循環サイクルの仕組みのことを指す。例えば、一度使用したものを回収して素材として再利用する技術も生まれており、捨てる先まで考えた商品の開発が重要だ。

現在、循環サイクルを実現している実例として、2社紹介する。1社目はGreen Down Projectが行っている羽毛製品のリサイクルシステム。こちらはダウンジャケットや寝具など羽毛を使った製品を回収し、中綿を切り出して、洗って再度素材として蘇らせる仕組みだ。

もう一つは日本環境設計のBringというケミカルリサイクルのシステムである。要らなくなった服を回収し、ポリエステルの部分のみを取り出し、再生ポリエステルを作るシステムで、これは日本で唯一実現を可能にした企業と知られている。

この2つの取り組みに多くのアパレル企業が賛同し、小売りの各店舗での衣料品回収や、再生素材を使った商品も多く販売され始めている。このまま生活者への認知度が上がっていき、「服は再資源として回収されるべき」という認識が広まっていけば、サーキュラーシステムの構築は順調にみえる。

ただ、サーキュラーシステムの1番の難点は、需要と供給のバランスを取るのが難しいという点ではないか。不要になった服の回収だけが多くなっても、それを使用し製品化されなければ結局は素材として残ってしまい、それを大量に保管する場所が必要になってくる。

また、製品にするために、服を大量に廃棄しなくてはならないとなってしまえば、本末転倒である。綺麗なサーキュラーを描くためには、ある程度の生産量の見込みを立てておかない限り、結局は無駄が出てしまうのではないか。

現在、日本で可燃ゴミとして出される服の量は1日1300tという調査もあり、これら全てが循環リサイクルに回った時に処理能力のある工場があるのかというところも懸念点として上げられる。

洋服は多種類の素材が混合されて1つの洋服に形成されているため、ダウン製品の再生時に出た側布(ダウン以外の素材)についてのリサイクルについては、まだ課題が残るだろう。

そして、再生ポリエステルのケミカルリサイクルに関しても、ポリエステル以外の混合物(例えば、50%ポリエステル50%コットンの綿の部分)の再資源化についても研究段階である。洋服にまつわるすべての素材が再資源化できる未来まではまだ時間がかかりそうだ。

ではデザインでリサイクルしやすい服を作れないか?と考える。現段階の偏った循環リサイクルシステムに変換させる事を出口とした時、モノマテリアル(単一素材)を使用する、なるべくシンプルな形にするなど、短略化が目指すべきこれからの姿勢のように見えてくる。

個人的にはファッションが人に与える影響を考えると、ワクワク感は減らさないで欲しいと切に思う。今こそファッションデザイナーはクリエイティビティを最大限に発揮し循環しやすく、高揚感が得られる素敵な洋服を創って欲しいと願う。

そして、サーキュラーエコノミー実現のためには、1社で目指すよりも、他社と協力し合いながら、技術やネットワークを複合的に使用し、服が100%再資源化できる未来をみんなで目指すべきではないかと思う。

takemuraio

竹村 伊央 (一般社団法人unisteps共同代表)

1982年名古屋市生まれ。一般社団法人unisteps co-founder / ファッションスタイリスト。高校卒業後渡英し、エシカルファッションムーブメントを作り上げたブランドの1つ、 JUNKY STYLINGに勤務。同時にスタイリストとしてもエシカルを中心としたスタイリングも手がける。 2010年帰国後、2012年にエシカルファッションのPR活動をする団体:ETHICAL FASHION JAPAN(EFJ)を設立。 エシカルの啓発を含めたイベントや講演活動をしながら、2016年よりファッションレボリューションジャパンカントリーコディネーターを務める。【連載】多様で健康的なファッションの未来を考える

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