対話ガイドラインの活用でガバナンス強化へ

【連載】サステナビリティ経営戦略(6)

2018年6月、金融庁から「投資家と企業との対話ガイドライン」(以下、対話ガイドライン)が策定・公表されました。対話ガイドラインは、コーポレートガバナンスを巡る現在の課題を踏まえ、企業と機関投資家の対話において重点的な議論が期待される事項を取りまとめたものであり、コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)及びスチュワードシップ・コードの附属文書として位置付けられています。(遠藤 直見・サステナビリティ経営研究家)

企業は、その内容自体についてコンプライ・オア・エクスプレインは求められませんが、CGコードの各原則を実施する場合や実施しない理由の説明を行う場合には、対話ガイドラインの趣旨を踏まえることが期待されています。

本ガイドラインは、企業と機関投資家との対話の質を高めることに加え、企業自身がより高いレベルのコーポレートガバナンスを構築するためのツールとしても活用可能です。

対話ガイドラインは6月のCGコード再改訂に合わせて改訂されます。

4月に公表された改訂案では、「経営環境の変化に対応した経営判断」においてサステナビリティに関連する重要な項目が新設されました。これらにはCGコードの内容を補完し、より高いレベルのコーポレートガバナンスを構築するための有益な示唆が示されています。

例えば、CGコード改訂案補充原則3-1③では、経営戦略の開示に当たり、事業を取り巻く環境変化への対応として、自社のサステナビリティについての取組みの適切な開示が求められています。

この点、対話ガイドライン改訂案では、サステナビリティの他、デジタルトランスフォーメーション、サイバーセキュリティ、サプライチェーン全体での公正・適正な取引等についての取り組みも経営戦略に適切に反映することが期待されています。

また、補充原則4-2②では、取締役会の責務として、サステナビリティを巡る取組みについての方針の策定や執行状況の監督が求められています。

この点、対話ガイドライン改訂案では、その検討・推進の実効性を高めるための枠組みとして、取締役会の下または経営陣の側に、サステナビリティ委員会の設置等が期待されています。

2022年4月以降の東京証券取引所の市場区分で、「より高い水準」のガバナンスが求められるプライム市場への上場予定企業は元より、多くの企業が対話ガイドライン改訂版をよく咀嚼し、効果的に活用することにより、持続的な成長と中長期の価値向上に向けたガバナンスの強化を目指していただきたいと思います。

遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

東北大学理学部数学科卒。NECでソフトウェア開発、品質企画・推進部門を経て、CSR/サステナビリティ推進業務全般を担当。国際社会経済研究所(NECのシンクタンク系グループ企業)の主幹研究員としてサステナビリティ経営の調査・研究に従事。現在はフリーランスのサステナビリティ経営研究家として「日本企業の持続可能な経営のあるべき姿」についての調査・研究に従事。オルタナ編集委員

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