「昆虫食」の魅力を伝える、地球少年の挑戦

地球少年の肩書きで、「動物も、植物も、虫も、あらゆることに分けへだてなく向き合える空気感」を世の中に作ることを目指して、昆虫食の魅力を伝えることに取り組む昆虫食歴22年の篠原祐太さん。食材としての昆虫の可能性を探究し、2020年6月には東京・日本橋馬喰町に昆虫をはじめとした、さまざまな生き物の魅力を味わえるレストラン「ANTCICADA(アントシカダ)」をオープンした。篠原さんはなぜ「昆虫食」の魅力を伝える活動を始めたのか、話を聞いた。(三原 菜央=スマイルバトン代表)

昆虫食を広める篠原祐太さん、肩書は「地球少年」

■桜の木の毛虫は、桜餅の味がする

2020年6月には東京・日本橋馬喰町に昆虫をはじめとした、さまざまな生き物の魅力を味わえるレストラン「ANTCICADA」をオープンした篠原さん。「コオロギラーメン」と「地球を味わうコース料理」を提供している。

「好き嫌いはあるにしても、動物も植物も虫も分けへだてなく理解して、少しでも親しみを感じながら生きられたらいいなと思い、食体験を通じてそのきっかけを作っています。食体験の中でも、特になかなか理解されない、誤解されることも多い、ゲテモノとしてくくられてしまうことすらある“昆虫食”をテーマに据えながら、昆虫が持たれているイメージを変えていけるような食体験を届けたいというのが直近のテーマです」

東京都八王子市にある緑豊かな自然に恵まれた高尾山の近くで生まれ育った篠原さんにとって、虫は身近な存在で、幼少期から虫を捕まえて食べていたという。

「よく公園の桜の木に毛虫いるじゃないですか。あの毛虫を初めて食べたときにすごい桜餅のいい香りがして。冷静に考えると、あの毛虫って桜の葉っぱしか食べてないので、なるべくしてその味と香りになっているんですけど。すごく当たり前のことですが、今自分が食べてるもの、接している生き物たちにも彼らの人生というか生き方があって、食べたもので身体が作られているんですよね。それを目の当たりにしたときに、生きるってすごいことだと子どもなりに感じたことが、今の活動の原動力になっています」

昆虫食への固定観念を払拭したい

虫のイメージを変えたいと奮闘する篠原さんは今、子ども向けワークショップなど“教育”に力を入れているという。なぜだろうか。

「自分の人生を育ててくれたのは、昆虫をはじめとした身近な生き物との触れ合いだったんですよね。だからこそ、昆虫食への固定観念を払拭して、その魅力を伝えていくことのできる自然体験、食育にカテゴライズされるワークショップに力を入れています」。

「例えばよくあるパターンだと、最初に昆虫食、ないしは昆虫に関する話をした上で、実際に多摩川の河川敷や代々木公園に行って、虫を捕まえます。捕まえながら、この虫はこういう特徴があるんだよとか、この野草も実は食べたらおいしい野草で今が旬なんだよとか、そんな話をします。その後、実際に調理して食べてみるというところまでがワークショップの一連の流れです」

今後も積極的に子ども向けワークショップに力を入れていきたいという篠原さんに、今後の展望を聞いた。

「小さいとき、ただ純粋に昆虫は魅力的、昆虫はおいしいと思っていたんですが、段々と周りの人たちの虫に対するリアクションを見るうちに、“これはきっと、虫を好きとか食べてるって言わない方がいいんだろうな”と、自分の気持ちに蓋をするようになっていました。友達に嫌われたくなくて、食べるどころか“虫が気持ち悪いふり”をして生きていました」

「だからこそ、当時の自分が救われたであろう環境や機会を作りたい、という気持ちが強くあります。子どもの環境は親御さんや学校の影響を強く受けると思いますが、なかなか虫や身近な生き物との触れ合う機会を作り出すのは難しい部分もあると思うので、そこを任せていただき、いろんなかたちで機会を作っていきたいと考えています」

mihara

三原 菜央(スマイルバトン)

株式会社スマイルバトン 代表取締役/iU客員教員 1984年岐阜県出身。大学卒業後、8年間専門学校・大学の教員をしながら学校広報に携わる。その後ベンチャー企業を経て、株式会社リクルートライフスタイルにて広報PRや企画職に従事。「先生と子ども、両者の人生を豊かにする」ことをミッションに掲げる『先生の学校』を、2016年9月に立ち上げる。2020年3月にボーダレス・ジャパンに参画し、株式会社スマイルバトンを創業。著書に「自分らしく働く パラレルキャリアのつくり方(秀和システム)」がある。執筆記事一覧

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..