欧州最大の資産運用会社が37の評価基準を公表

欧州最大の資産運用会社アムンディの日本支社はこのほど、「アムンディ責任投資方針2021」を公表した。ESGに関わる判断や基準を投資方針に統合する上でのアムンディの体制や方策、戦略の説明が目的だ。「ESG分析プロセス」「37の評価基準」「テーマ・エンゲージメント」等から成る。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

アムンディはパリに本部を置く資産運用会社だ。運用資産額は資産1兆7290億ユーロで、欧州最大、世界トップ10に入る。運用資産全体の約22%に相当する3,780億ユーロを責任投資として運用している。

ESG分析プロセスでは、「環境:エネルギー消費の抑制、温室効果ガス排出の削減などを通じた環境への直接的・間接的な影響をコントロールする企業能力」、「社会:普遍的な基本理念に基づき、企業がいかに人的資本を発展させるための戦略」、「ガバナンス:長期にわたる企業価値の創出のための複数のステークホルダーとの協調関係構築」を問う。

ESG分析は、全企業に共通する一般基準16項目とセクター基準21項目から成る。

■16項目の一般基準

<環境3項目>
「電力消費および温室効果ガス排出」「水資源」「生物多様性、環境汚染、廃棄物」

<社会6項目>
「労働環境と差別のない処遇」「健康と安全」「社会との関係性」「顧客/サプライヤーとの関係」「製造物責任」「地域社会への貢献と人権」

<ガバナンス7項目>
「取締役会の独立性」「監査と内部統制」「役員報酬」「株主の権利」「企業倫理」「ESG戦略」「税務慣行」

■21項目の セクター基準

<環境9項目>
環境対応車【自動車】、代替エネルギーおよびバイオ 燃料の開発と生産【エネルギー/公益】、責任ある森林資源管理 【製紙/林業】、環境ファイナンス 【銀行/金融サービス/保険】、グリーン保険【保険】、持続可能な建築【建設資材】、包装パッケージングとエコデザイン【食品・飲料】、グリーン化学【化学】、紙リサイクル【製紙/林業】、

<社会12項目>
生命倫理【薬品】、医療へのアクセス【薬品】、車輛の安全性【自動車】、乗客の安全【運輸】、健康志向の製品【食品】、情報格差への対応【通信】、責任あるマーケティング 【薬品/銀行/その他金融サービ ス/食品・飲料】、金融サ-ビスへのアクセス 【銀行/その他金融サービス】、製品開発過程の健全性【食品・飲料】、タバコに関連するリスク 【タバコ】、編集倫理【メディア】、個人データ保護【ソフトウェア】

テーマ・エンゲージメントは、複数セクターに共通するテーマを中心に、既存の慣行の理解、最良のESG実践の推奨、改善の提案、進捗状況の測定を目的として実施する。

muroi

室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

執筆記事一覧
キーワード: #ESG投資

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..