iPhone などスマートフォン技術を利用して、社会貢献活動への参加を呼びかけるNPOが増えている。高齢者や障がい者向けの多機能トイレの情報を登録・検索できるアプリや、アフリカのエイズ孤児支援活動に寄付できるアプリがこのほど登場した。視覚障がい者や聴覚障がい者でも操作を可能にする機能を搭載したiPhoneは、環境・社会貢献の分野でも有力なツールになりそうだ。
全国にある多機能・多目的トイレの情報を登録・検索できるサイト「チェックアトイレット」を運営しているのは、NPO法人チェック(東京・世田谷)だ。2010年5月には、iPhoneアプリでトイレマップを作成・閲覧できる「チェックアトイレット フォー・アイフォーン」をリリースした。ユーザーは、トイレの表示や手すりの位置、付き添い者が入るスペースがあるかなど、写真とともに情報を登録できる。
元旅行代理店の営業マンだった金子健二代表理事は、旅行の企画をする際に、多機能トイレとその情報を集約させる必要性に気付いたという。07年6月にサイトを開設し、08年1月にはNPO法人化した。
障がい者らと一緒に街を歩き、iPhoneアプリでトイレの情報を地図に登録するという企画も一般・法人向けに行っている。実際に、障がい者と歩き、トイレを観察してみると、いかに多機能トイレが必要か実感でき、快適なトイレ環境とは何かを考えさせられる。2011年1月15日には、トートー、父親支援を行うNPO法人ファザーリング・ジャパン(東京・文京)と共同で、iPhoneを使った社会貢献イベント「パパと子どもで体感! ユニバーサルデザイン~未来のトイレをデザインしよう」を開催する予定だ。
金子代表理事は、「トイレ探しをしてみることで、高齢者、障がい者ばかりではなく、乳幼児を連れた際のトイレの不便さにも意識が向きます」と語る。
アフリカのエイズ孤児支援を行うNGOプラス(東京・品川)は、iPhoneアプリ「チャリティ・クロック」を12月16日にリリースした。エイズ孤児は全世界でおよそ1500万人にも上るといわれ、そのうち1230万人はサハラ以南のアフリカ地域に存在するという。エイズによって親を亡くしたエイズ孤児の数は、14秒に一人の割合で増えている。
チャリティ・クロックには、住んでいる地域の時刻に加え、ケニアの時刻も表示される。エイズ孤児が増えるペースと同じく、14秒に1回写真が切り替わる機能もある。ウガンダのインターネットラジオをBGMにすることもでき、遠いアフリカの問題を身近に感じることができそうだ。
クレジット決済で寄付もできるので、手軽にプラスの活動を支援できる。1000円寄付すると、ケニアの80名の妊産婦や地域住民に母子感染予防について知らせることができるという。
iPhoneには、気付いたときにすぐ活動に参加できるモバイル端末の強みがある。今後も、自分と社会問題とをつなげるきっかけを作ってくれそうだ。(オルタナ編集部 吉田広子)