学校エアコン1,500台分の代替フロンを適正管理

フロン管理の現場からーRaMS導入事例紹介ー(1)

「20世紀最大の発明の一つ」とも言われたフロン(CFC:クロロフルオロカーボン)は、それまで有毒な冷媒を使っていた冷凍空調機に大きな進歩をもたらした。ところが、そのフロン類がオゾン層を破壊するメカニズムが発見され、世界で規制が進む。日本でも2020年4月施行の改正フロン排出抑制法で、罰則が大幅に強化された。企業はどのようにフロン類を管理していけば良いのか。積極的に課題解決に取り組む企業を紹介する。(聞き手・香川希理=弁護士:企業法務とフロン排出抑制法が専門、記事・松田慶子=オルタナ編集部)

第1回:北陸電力ビズ・エナジーソリューション株式会社
ソリューション事業部 鈴木 誠 部長
聞き手:香川 希理 弁護士(香川総合法律事務所代表)

フロン排出抑制で温暖化対策に貢献

温室効果ガスの代表格はCO2(二酸化炭素)だが、メタンや一酸化二窒素などと並び無視できないのが「代替フロン(HFC:ハイドロフルオロカーボン)」だ。主に冷凍空調機器の冷媒に使うが、その地球温暖化係数はCO2の100~10000倍にも達する。国内法では2020年に「改正フロン排出抑制法」が施行された。使用時の冷媒漏えいに加え、機器廃棄時の確実な冷媒回収を目指し、違反者に「直接罰」を科す厳しい内容だ。

北陸電力ビズ・エナジーソリューション株式会社は、学校のエアコン1,500台の代替フロンを管理する。JRECOが開発した冷媒フロン管理システム「RaMS」を活用することで、業務は大幅に効率化できたという。(連載・PR)

――北陸電力グループの会社とお聞きしております。主な業務内容や脱炭素やフロン管理のご方針を教えていただけますか。

多様化するお客様のエネルギーへのニーズに素早く対応できるよう2017年に設立したグループ会社で、エネルギー設備受託サービス・ESCOサービス(※)、補助金申請支援サービス等を提供しています。

主力事業であるエネルギー受託サービス・ESCOサービスは、お客様の建物や敷地に我々の設備を置かせていただき、その設備で生産した熱やエネルギーを供給して対価をいただくサービスです。今回のフロン管理に関わる対応については、冷媒を多く使うヒートポンプやターボ冷凍機などで関わっています。

2050年カーボンニュートラルに向けての対策は、北陸電力グループ全体で進めています。そのなかで当社としては、省エネ設備の導入や再エネの導入などを通じて、お客様の脱炭素化に取り組んでいます。脱炭素ばかりが脚光を浴びておりますが、フロン排出抑制も同義で対応すべきものという位置づけです。

――RaMS導入のきっかけをお聞かせください

北陸電力ビズ・エナジーソリューション株式会社
ソリューション事業部 鈴木誠 部長

従来は管理する冷凍機が数十台程度であるため、エクセルでフロン管理しておりましたが、2年前、富山市と石川県津幡町の小・中学校空調整備事業において、約1500教室にエアコンを導入することになりました。従来の手法に限界を感じ、何か効率的かつ適切に管理できるものはないかと探していたところ、同様のサービスを提供されている企業様にRaMSの存在をお聞きしました。                                      

空調メーカー様でもそれぞれフロン管理システムを提供されていますが、本事業では複数メーカーの機器を扱うこともあり、メーカー色に染まらず、汎用的でかつ使いやすいシステムであることが導入の決め手となりました。

――導入後のメリットは

当社のサービスでは、当社がフロンの管理責任も負います。点検のほとんどは専門の業者様にお願いしています。これまでは業者様がそれぞれのフォーマットに入力した書類を受領し、こちらでエクセルに再入力していたのですが、RaMSは国が指定する書式を使っているため、点検時に業者様がRaMSへ直接入力してもらうことができ、集計の手間を省くことができます。機器の台数が多いので、入力に1台1分かかるとしても膨大な時間となり、大幅な効率化になります。また、2つの自治体の100を超える学校ごとに管理できることもメリットと感じています。

――エネルギー供給企業として多くのお客様とお話されると思いますが、お客様はフロン排出抑制法・改正法について、どのくらい理解されているとお感じになりますか。

大きな工場をお持ちのお客様では、もちろん自社でしっかり管理されていらっしゃいます。ただ、冷媒管理の必要性をご存じないお客様もいらっしゃって、フロン管理義務のお話をすると「そんなことをしなくてはいけないのか」と驚かれることもあります。

ここは我々のサービスをご活用いただくことで、設備の初期投資もかからず、コストを抑えることができるだけでなく、法律で定められている煩雑なフロン管理もおまかせいただけるので、お客様へのメリットは大きいと考えます。

聞き手:香川希理弁護士(香川総合法律事務所代表)

――フロンがモントリオール議定書・キガリ改正により、生産調整で供給が削減されることについて、御社はどのように対策されますか。

フロンの生産抑制については承知しているものの、ノンフロン冷媒の選択肢はアンモニア、炭化水素、二酸化炭素などそれほど多くなく、例えばアンモニアや炭化水素のように安全性への懸念や、エネルギー効率の課題、高価であったりすることが現実で、安全性やコストを度外視して進めることは難しいです。ここは冷媒メーカー・冷凍機メーカーに是非とも頑張っていただきたいところです。

※ESCO事業:省エネルギーに関する包括的なサービス。ESCO事業者は省エネルギー 改修にかかる費用を光熱水費の削減分で賄い、省エネルギー診断、設計・施工、運転・維持管理、資金調達などにかかるすべてのサービスを提供する。省エネルギー効果の保証等により、顧客の省エネルギー効果(メリット)の一部を報酬として受取る。

■ ■ ■

JRECO(一般財団法人日本冷媒・環境保全機構)とは

一般財団法人日本冷媒・環境保全機構は、冷凍空調機器からの冷媒フロン類(CFC、HCFC、HFC)の大気放出抑制、使用の合理化及び管理の適正化に係わる事業の推進を、関係事業者との連携及び行政当局との協調のもとで実施している。
事業の一環として2015年に施行されたフロン排出抑制法の遵守ツール「RaMS」をクラウドで提供する。「RaMS」には主務大臣から認可された「情報処理センター」機能を含み、書面によらない一元管理とデータ解析によるDX推進が可能だ。

RaMS(冷媒管理システム)とは

RaMSは第一種特定製品(業務用冷凍空調機器)とその冷媒の管理ができるクラウドシステム。経済産業省と環境省から認可された情報処理センター機能を包含し、法により管理が義務付けられている全書面を電子的に改正法に準拠した形で管理でき、フロン排出抑制法を遵守することが可能になる。
機器の所有者にとって、法遵守のための機器の総棚卸しは煩雑で負担が大きな作業だが、RaMSを活用することで少ないリソースで管理できる。経営に活かせるデータの解析や温対法算出も可能だ。

代替フロンやRaMSについて詳しく知りたい方はこちら→ yamamoto(a)jreco.or.jp
(a)を@に変更してお送りください。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #SDGs#脱炭素

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