拡大するインパクト投資、パーパスが呼び込む

【連載】サステナビリティ経営戦略(7)

インパクト投資市場が急速に拡大しています。

世界最大級のインパクト投資家コミュニティ「グローバル・インパクト投資家ネットワーク(GIIN)」によると、世界のインパクト投資の市場規模は2019年末時点で7150億ドルと前年比4割ほど増加しました。(遠藤 直見・サステナビリティ経営研究家)

インパクト投資とは「財務的リターンに加えて、ポジティブで測定可能な社会・環境面のインパクトを生じさせるという明確な意図を持って行われる投資」(GIINの定義)であり、ESG投資の発展形の一つです。(インパクトとは事業活動がもたらした変化や効果。)

ESG投資もインパクト投資も、投資家が企業による環境や社会への取り組みを考慮して投資先を選び、財務的リターン(経済価値)を追求する点は同じです。

インパクト投資の特徴は、投資家が投資先の企業を通じて環境や社会にポジティブなインパクト(社会価値)を創出する「意図」を持ち、企業と協働でインパクトを「測定・開示」する点にあります。

日本でもインパクト投資が徐々に拡大しています。三井住友信託銀行、第一生命保険等で取り組みが始まっており、環境省や金融庁もタスクフォース(TF)や勉強会を立ち上げ、インパクト投資の促進に積極的に乗り出しています。

環境省のポジティブインパクトファイナンスTFは、2020年7月に「インパクトファイナンスの基本的考え方」を策定し、全ての機関投資家・金融機関等による全てのアセットクラスにおけるインパクトファイナンスの実践を目指しています。

ESG投資と比べて、インパクト投資はサステナビリティ経営との親和性や相乗効果がより高いと言えます。

サステナビリティ経営でも、企業が存在意義やパーパス及び長期ビジョンという明確な「意図」を持ちます。そして、その実現に向けて経済価値と社会価値を両立するビジネスモデルを作り上げ、戦略に落とし込み、ステークホルダーとの協働を通して実行し、そのプロセス及び成果(環境や社会へのインパクト含む)を測定・開示します。

企業と投資家は、サステナビリティ経営とインパクト投資におけるそれぞれの「意図」を尊重し合いながら、インパクト測定・開示を含む様々な局面で互いに切磋琢磨することが重要です。

そのような切磋琢磨をとおして、企業のサステナビリティと社会のサステナビリティの同期化に向けた取り組み(SX:サステナビリティ・トランスフォーメーション)が加速し、環境や社会へのポジティブなインパクトが増大し、SDGsの達成にも繋がっていくことを期待したいと思います。

遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

遠藤 直見(オルタナ編集委員/サステナビリティ経営研究家)

東北大学理学部数学科卒。NECでソフトウェア開発、品質企画・推進部門を経て、CSR/サステナビリティ推進業務全般を担当。国際社会経済研究所(NECのシンクタンク系グループ企業)の主幹研究員としてサステナビリティ経営の調査・研究に従事。現在はフリーランスのサステナビリティ経営研究家として「日本企業の持続可能な経営のあるべき姿」についての調査・研究に従事。オルタナ編集委員

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キーワード: #サステナビリティ

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