NGOが推す世界のサーキュラーエコノミー事例

国際環境NGOのグリーンピース・ジャパン(東京・新宿)はこのほど、プラスチック問題に関するメディア向けの勉強会を開いた。サーキュラーエコノミー(循環型経済)を推進する英エレン・マッカーサー財団から「ニュー・プラスチック・エコノミー」プログラムの担当者が登壇し、世界で注目されているサーキュラーエコノミー事例を紹介した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

プラスチックごみの「蛇口」を閉める

「もし帰宅してあなたの部屋が水浸しになっていたら、すぐにモップをかけますか。まずは水道の蛇口を止めるでしょう。それと同じことがプラスチック問題でもいえます。あふれ出たごみの対処をする前に、まずは川上(原材料や製品の設計段階)から見直し、ごみを出さない仕組みにしなければなりません」

こう話すのは、エレン・マッカーサー財団イノベーション・ニュープラスチックエコノミーのプログラムマネジャー、サラ・ウィングスタンド氏だ。

同財団は、プロのセーリング(帆走)選手だったエレン・マッカーサー氏が、世界の海を巡るなかでプラスチック問題に危機感を募らせ、サーキュラーエコノミーを推進するために立ち上げた団体だ。「2050年までに海洋のプラスチックごみの重量が魚を上回る」との推計を発表した報告書でも知られている。

サーキュラーエコノミーとは、廃棄物を出さずに、原材料調達や設計段階から資源を循環させることを目指した経済のあり方を意味する。

世界で問題になっている海洋プラスチックの8割は陸で発生したもので、その約半分が容器包装などの使い捨て製品だとされている。

サラ氏は「川上のイノベーションには『Elimination(排除)』『Reuse(再利用)』『Material Circulation(素材の再資源化)』があるが、まずはできるだけ排除するか、再利用可能にすることが重要だ」と話す。

サラ氏は「『排除』は単にストローやレジ袋を禁止するということではなく、『パッケージを必要としない』製品やサービスを創造し、新たな価値を提供することである」と強調する。

サラ氏はパッケージの「排除」や「再利用」につながる世界の事例を紹介。その一部は次の通り。

1)食用コーティング剤「Apeel(アピール)」

米フードテックのアピール・サイエンセズ社は、100%植物由来の天然素材を使った食用コーティング剤「アピール」を開発。キュウリなどの野菜は通常、鮮度を保つために、プラスチックで包装されて店頭に並んでいるが、このアピールを野菜に塗ると、包装しなくても、食品の保存期間を延ばすことができる。

2)カールスバーグの「Snap Pack(スナップパック)」

ビールメーカーのカールスバーグは、ビールを6缶にまとめるプラスチックの「シックスパックリング」から、接着剤で缶同士を付ける「スナップパック」方式に変更した。

接着剤で6缶をまとめるスナップパック方式

3)ラッシュの固形シャンプー「シャンプーバー」ほか

サステナビリティを追求する英コスメブランドのラッシュは、包装が要らない製品開発を進めている。シャンプーやコンディショナー、ボディーローション、マウスウオッシュなどを固形化し、パッケージを大幅に削減。シャンプーバー(固形シャンプー)はこれまで3800万個を売り上げ、9000万本のボトル削減につながった。

4)タブレット型洗剤「everdrop(エバードロップ)」

ドイツ発のエバードロップは、タブレット型の洗剤。キッチンやバスルームなど用途別のタブレットを蒸留水に溶かして使う。

5)コカ・コーラ社が南米でデポジット制導入

コカ・コーラ社は南米で、飲み終わった炭酸飲料のボトルを店舗に返却してもらうことで、一部を返金するデポジット制を導入している。ファンタやコーラなどブランドが異なる炭酸飲料のボトルを共通化し、返却されたボトルを洗浄し、詰め替えする仕組みに切り替えた。

6)ネスレが量り売りでMIWA(ミワ)と連携

ネスレは、量り売りシステムを開発したチェコのMIWAと連携し、インスタントコーヒーとペットフードの量り売りを試験的に実施している。一部店舗で、MIWAが提供する再利用可能なディスペンサーを設置し、消費者は詰め替え容器を持参して、必要な分だけ購入できる。商品ラベルの代わりに、原材料や栄養価、賞味期限はデジタル表示される。

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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