環境省とJリーグ「脱炭素連携」の舞台裏

■気候変動や脱プラ推進へ■

環境省は6月28日、サッカーのJリーグと連携して、気候変動対策や使い捨てプラスチックの削減などの取り組みを展開していくと発表した。Jリーグは1993年の創設時から、各クラブに「ホームタウン活動(地域での社会貢献活動)」を義務づけており、J1からJ3までの全クラブのホームタウン活動の実績は年に2万回を超える。地域に根差してきたJリーグとどのようなコラボが生まれるのか期待したい。(オルタナS編集長=池田 真隆)

写真右から、中村憲剛さん、小泉環境相、村井満・Jリーグチェアマン、夫馬賢治・Jリーグ特任理事。6月28日の連携協定発表会で

「ピッチがなければサッカーができないように、地球が健全でなければ経済も暮らしも成り立たない」――。6月28日、環境省とJリーグの連携協定の発表会に出席した小泉進次郎環境相はこう語った。菅首相の「2050年カーボン実質ゼロ宣言」によって加速化する脱炭素政策を推し進めるにあたって、環境省は「地域から変革」を重要視している。そのため、地域に根差したJリーグを「欠かせないプレーヤー」と評した。

環境省は今年に入り、2050年にカーボンニュートラルを目指すため、脱炭素をテーマに再エネ事業者や自治体、高校生などと話し合う会議を複数回開いてきた。その会議で話した内容をもとに「地域脱炭素ロードマップ」として取りまとめた。

小泉環境相は内閣官房が6月9日に開いた第3回「国・地方脱炭素実現会議」でこのロードマップについて発表すると、菅首相から賛同を得て、正式に公表した。2030年までに100の自治体でCO2排出実質ゼロを目指すことや脱炭素の基盤となる重点対策として、「自家消費型太陽光」や「省エネ住宅」などを全国に普及させることを盛り込んだ。今後はこのロードマップをもとにあらゆる政策を地域で総動員していく。

今回の協定では下記の5つの取り組みを連携して展開していくと発表した。

,SDGs の観点での地域の活力を最大限発揮するため、地域社会を構成する行政、企業、金融機関、市民団体、大学・学校、サポーター、J クラブなどのステークホルダーが一体となった取組を実現するための環境整備と情報発信・コミュニケーションの推進

.脱炭素社会(カーボンニュートラル)、循環経済(サーキュラーエコノミー)、分散型社会への移行を進めるための知見の共有や普及活動・行動変容を促す活動での協力(例えば、各種取組の効果や価値の見える化、地域での更なる活動推進、地域循環共生圏の構築、スタジアムやゲーム運営でのサステナビリティ向上、J リーグやJ クラブが持つ潜在的な魅力の発掘など)

.ホームタウンの地域資源を最大限活かした地産地消の取組の推進

.環境省とJ リーグが持つ様々なチャネルを共有する連携の強化

.共通のゴールを実現するための更なるアクションを展開するための継続的な協議

■Jリーグ、2025年に「使い捨てプラ」禁止へ

環境省はなぜJリーグと組んだのか。実は、Jリーグは全クラブ(J1からJ3)に「ホームタウン活動(地域貢献や環境保護など)」を義務付けている。57の全クラブのホームタウン活動の合計回数は年間2万5千回にも及ぶ。加えて、クラブの非財務的価値を高める取り組みとして、2018年から「シャレン!」を始めている。

シャレン!は社会連携の略称で、クラブ、自治体、企業など3者以上が連携して、社会課題の解決に取り組むものだ。村井満チェアマンの発案から生まれた新しい社会貢献活動だ。

こうした草の根の取り組みが、地域で脱炭素を進める環境省の意向とマッチしたことで連携協定が生まれた。連携協定の発表会で、村井チェアマンは2025年頃までにすべてのクラブで使い捨てプラスチックの使用を禁止することを考えていると話した。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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