P&GがNASAと提携、水不要の洗剤開発へ

米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)はこのほど、国際宇宙ステーション(ISS)における洗剤開発契約を米航空宇宙局(NASA)と結んだ。2022年にISSにおいて衣料用洗剤ブランド「Tide」の水を使わない洗剤をテストする。将来的には、水の供給が困難な地域でも使えるよう社会課題解決型の商品に育てることも視野に入れる。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

衣料用洗剤ブランド「Tide」

宇宙での洗濯の課題は、洗剤成分の安全性とNASAの生命維持システムとの互換性、洗浄に使える水の量、洗浄に使った水を飲用水に戻す必要性などだ。P&Gはこれらの課題に対処するため、完全に分解可能な洗剤を開発したとしている。

ISSに長期滞在する宇宙飛行士は、洗濯機も洗濯に使える水のない状況で何日間かは同じ服を着て補給船が来た時に新しい衣服と引き換えに廃棄物として出すというルールを行っている。洗濯物は、乗組員1人当たり年間160ポンド(約73キロ)発生する。

NASAは「Mission PGTide」と表し、「Tide」のペン型汚れ落とし商品「Pen」、ふき取りペーパー型商品「Wipe」(ワイプ)の成分の無重力空間での効果を測定する。

ISSでのテストに加え、NASAとP&Gは月と火星でのミッションのための、洗浄と乾燥を可能にするユニットの開発も検討している。

火星との間の将来のミッションは、複数年に及ぶと予想され、長時間飛行は極端な宇宙ベースの環境と様々な重力条件を勘案して設計した洗剤を必要とするためだ。

月や火星にはISSのようには補給船は来ない。それゆえ洗濯は避けれない日常作業となる。Tideの宇宙用洗剤により貴重な水の消費を抑え、補給船に掲載する物資を節約する効果をもたらす。

宇宙で役立つ技術は地球上でも役に立つ。すすぎを繰り返さなくとも完全に分解する洗剤は、水の節約だけでなく排水をきれいにし、廃棄物を減らす環境に優しい洗剤となる。将来的には、水の供給が困難な地域でも使えるよう社会課題解決型の商品に育てることも視野に入れる。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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