政府は5月21日に2021年度のSDGs未来都市を新たに31都市選定した。新型コロナウイルスのパンデミックでは自治体の役割がクローズアップされている。都道府県はもちろん、市町村・特別区の対応が市民から高い関心を集めている。我々は、グローバル化の中で、やはりローカルの一員であると改めて気づいたのである。どの国に住んでいるか、どの自治体に住んでいるか、が重要になってきた。SDGs未来都市の役割と意義を確認しておきたい。(千葉商科大学基盤教育機構教授/CSR・SDGsコンサルタント=笹谷 秀光)

■SDGs未来都市の追加選定

2021年度のSDGs未来都市として、地方創生分野における日本の「SDGsモデル」の構築に向け、「SDGs未来都市」として31都市、また、特に先導的な取組を「自治体SDGsモデル事業」として10事業を選定した。

この結果、2018年度~2020年度の3年間の選定と合わせ、累計は「SDGs未来都市」124都市、「自治体SDGsモデル事業」40事業となった。応募数は増加傾向にあり、採択率は半分以下である。

新たに選定された自治体とSDGsのテーマの一覧は内閣府のサイトを参照いただきたい。この中で、都道府県レベルの選定は、群馬県、埼玉県、福井県、沖縄県の4県であり、これまでの、北海道、神奈川県、長野県、広島県(2018年度)、富山県、愛知県、滋賀県(2019年度)、岐阜県、三重県、大阪府(2020年度)の10に4つ加わり、14がSDGs未来都市に指定された都道府県レベルの自治体だ。

都道府県がSDGs未来都市に指定されている場合は県内でのSDGs仲間の自治体間での調整がより進むであろう。市町村レベルでは、各都道府県からバランスよく27選定され、累計110自治体となった。

SDGs未来都市制度の特色

地方創生については、2019年12月に発表された「第2期まち・ひと・しごと総合戦略」では、SDGsが重要な横断的目標として位置づけられた。SDGsは政府内で「主流化」し、2019年の内閣府の取りまとめによれば、地方創生のSDGs関連予算は127本に及び、ほとんど全ての府省が関係している。

主流化というのは単なる参照事項ではなく、政策そのものになっているということだ。

次のように数値目標も設定していることが制度の特色だ。

・内閣府は、2024年度までの期間において、SDGsの取り組みを行う都道府県及び市区町村の割合を60%にすることを目指す
・SDGs未来都市選定数を累計で210都市にする
・「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」における官民連携マッチングの件数を累計で1000件とする
・地方創生SDGs金融に取り組む地方公共団体の数を累計で100団体とする

SDGs未来都市制度に学ぶ指標設定

もう一つ重要な特色は、SDGs未来都市制度では指標設定がしっかりしていることだ。

SDGsには3層構造といわれる、目標、ターゲット、指標があるが、この3点がしっかりそろっているのが自治体SDGsである。その点では、他の主体(企業など)によるSDGs推進以上に先駆的な試みが、自治体SDGsといえる。

特にSDGs未来都市に選定された自治体の計画の中の指標設定を見たり首長の考えを聞くと、自治体関係者のみならず、企業にとっても大変参考になる。

企業もSDGsの指標作成(KPI)に取り組んでいるが、自治体のSDGsと違い、指標を設定するのは難しい面がある。一企業で対処できるターゲットは限られるからだ。

これに対し自治体では、世界の指標では難しいものについては、国の指標やローカライズされた指標を自身の統計データを使い参考にしたり作成したりしやすい。つまり指標が立てやすい。なぜなら、自治体行政では、これまでも指標を立てつつ計画的に推進しデータもとっているからだ。

SDGs未来都市制度への期待

SDGsは今や各府省の政策に入り込み、現在では主流化している。

例えば、SDGs推進本部の事務局を担う外務省をはじめ、金融庁はESG投資との関連でガイドラインを取りまとめ、経済産業省はSDGs経営ガイド、環境省は中小企業向けのSDGsガイドラインという形でそれぞれが指針的なものを作り始めた。

かつての行政経験(31年間の農林水産省、うち3年間の環境省、3年間の外務省出向)からの私見では、この中で、地方創生法と絡めて、予算措置も講じてSDGs未来都市の自治体をすでに124も指定した、内閣府地方創生推進事務局の政策がSDGsでは先行しているとみてよいのではないでないかと思う。

SDGsが経済・社会・環境の総合的な取り組みであること、地方という現場を持っていること、また、地方創生法という総合的な法律を持っていることから、コンセンサス形成がしやすかったのではないかと推察する。

SDGsでは各目標・各ターゲットの相互のリンケージが重要だ。このため、縦割りの各省庁ではなかなか総合的にこれを進めるのは難しい面があるのではないか。

SDGs未来都市は、政府による審査を経て認められたベストプラクティスとして内外に発信される。その自治体の関係者にとって名誉なことであり、加えて自治体SDGsモデル事業に選定されればモデル事業のメリットも享受できる。

また、SDGs未来都市になったことに伴い、同じく未来都市に認定された自治体同志での交流も深まる他、企業から見れば、SDGs経営企業も増えており、特に地元密着の中堅・中小企業にとってはSDGs未来都市との連携で自社のSDGs経営を推進しやすくなる。

今回の新型コロナウイルスの世界的流行によって、SDGsがリスク管理でも機能することが、いち早くSDGsに取り組んできた関係者に再認識されている。健康政策面での自治体SDGsの深掘りも期待したい。