衣服のローカルメイド、普及に賛成すべきか

多様で健康的なファッションの未来を考える(8)

現在、日本市場における衣服の輸入浸透率は約98%と言われている。日本で売られている衣服の殆どが日本以外で生産されているという事だ。これを問題ととるのか、進んだグローバル社会での当然な生産方法と捉えるのか、今回はこの点について考えてみる。

現在、国内アパレル市場における輸入浸透率は約98%と言われている。日本で売られている衣服の殆どが日本以外で生産されているという事だ。これを問題ととるのか、進んだグローバル社会での当然な生産方法と捉えるのか議論が必要だと感じる

衣服の輸入率は右肩上がりで伸びている

そもそも、衣服を作り過ぎている現状もあり、今の生産量をそのまま全て日本の工場で補うのは些か無理な話があるような気がする。現に、日本の工場で海外からの研修生に長時間労働を強いた問題などが摘発されており、日本人の担い手を確保できず、人手不足が発生していると懸念される。

また、海外生産のメリットの一つとして、人件費が日本に比べて安価だと言われている。先に挙げた、日本の縫製工場での研修制度の悪用問題は過剰労働だけではなく、賃金未払いや過剰な低賃金も問題だ。

これは、衣服の生産が海外に移行する中で、日本の工場が海外工場と張り合うため安値でビジネスをしなくてならず、結果として人件費の支払いに圧迫が出てしまった結果とも言えるだろう。

このように衣服の生産には、負のループが根付いてしまっている。これを国内生産に戻す事は可能なのだろうか。縫製作業に対する対価や地位を上げない限り、縫製員の増加は見込めないし、賃金が上がれば当然衣服の値段は上がる。それを生活者がどう受け入れられるのかがキーとなりそうだ。

国内生産を考えた時、メリットと考えられるのは、雇用の創出、産業の活性化、そして、輸送時に発生する温室効果ガスの抑制も見込めるという点だ。国内の移動は海外の国を跨いだ移動よりも距離は少なく出来ると言うことだ。

だが、素材からすべての生産工程を国内のみで行うのは土地利用の観点などから見ても難しいと感じる。そして、長距離移動の観点では、EVの活用などが重視され始め、移動距離ではなく、使用エネルギーの問題と論点が移行しつつある。

ここまで、国内生産にする事のメリットやそれに対する問題などを考えてみたが、なかなかどうやって進めていけば良いのか?というところが悩ましい。最後に、私がお勧めしたい国内生産のメリットを最大限に活かせる方法を提案して終わりにしたいと思う。

それは、「素材開発」。特にリサイクルを活かした開発を進めるのはどうだろうか。国内で捨てられたものを再利用し、新たな雇用を生みながら、先進的な技術を使って新たな素材を造り出すことができれば、とても魅力的な話に聴こえてくる。

現在、SDGsに纏わるプロジェクトに投資や助成金が出ているように、国内循環リサイクルに関わるプロジェクトに対してもサポートや投資が増えると良いと思う。

takemuraio

竹村 伊央 (一般社団法人unisteps共同代表)

1982年名古屋市生まれ。一般社団法人unisteps co-founder / ファッションスタイリスト。高校卒業後渡英し、エシカルファッションムーブメントを作り上げたブランドの1つ、 JUNKY STYLINGに勤務。同時にスタイリストとしてもエシカルを中心としたスタイリングも手がける。 2010年帰国後、2012年にエシカルファッションのPR活動をする団体:ETHICAL FASHION JAPAN(EFJ)を設立。 エシカルの啓発を含めたイベントや講演活動をしながら、2016年よりファッションレボリューションジャパンカントリーコディネーターを務める。【連載】多様で健康的なファッションの未来を考える

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