亀岡市と連携協定、プラごみゼロへ

マイケル・マギーBRITA Japan社長インタビュー
「水の飲み方を持続可能な方法に変える」というミッションを掲げる独浄水器メーカーBRITA(ブリタ)。日本法人のブリタジャパンは2019年から使い捨てプラごみ問題に取り組んできた。3年目を迎え、マイケル・マギー社長は「ビジネスの成功とサステナビリティが両立することを証明していきたい」と語る。 (RR)

マイケル・マギーBRITA Japan社長

─なぜBRITAは、使い捨てプラスチックごみ問題に力を入れることになったのでしょうか。

サステナビリティ(持続可能性)は、BRITAのDNAに深く刻まれています。私たちは「水の飲み方を持続可能な方法に変える」というミッションを掲げる浄水器メーカーです。

使い捨てされてしまうペットボトルの代替案を提示することで、海洋プラスチックごみ問題の解決に寄与するほか、原料の石油や輸送などにかかるカーボンフットプリントを減らし、気候変動対策にも貢献します。

当社では10年以上前から、富士山での育林活動と荒川河川敷でのクリーン活動を行っています。

私も荒川のクリーン活動に参加しましたが、捨てられているごみの多くをペットボトルが占めていました。意図しない形であれ、これだけペットボトルが流れて出てしまっている現状を目の当たりにすると、リサイクルするだけでは解決しない、もとから減らす努力が必要だと実感しています。

この数年で、世界的な海洋汚染問題への関心の高まりとともに、使い捨てプラスチックに対する規制も強化されています。日本でも同様の動きがあります。そうしたなかで、当社は2019年に「BRITAEcoWater Action 2021(ブリタ・エコウォーター・アクション2021)」をスタートしました。

多様なセクターと協働して、社会課題の解決を目指す「コレクティブインパクト」を掲げ、行政やNPO/NGO、教育機関などと連携しています。

セクターを越えインパクト高める

─多様なセクターと連携することは、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

企業が単独でできることは限られていますから、多様なセクターとプロジェクトを実施することで、社会に与えるインパクトをより高めていきたいと考えました。

NGOとの連携では、WWF(世界自然保護基金)ジャパン(東京・港)とのコラボ商品を販売しました。1個購入されるごとに、当社が100円を寄付する仕組みです。

2020年6月には、「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」をした京都府亀岡市と包括連携協定を締結し、給水スポットの整備やマイボトルの普及を進めています。

その一環として、使い捨てプラごみ問題やSDGs(持続可能な開発目標)をテーマにした高校生向け教材を制作しました。

府立亀岡高校、南丹高校で特別授業を実施し、その後も両校は継続して学習を続けました。フィールドワークを実施したり、独自にアンケート調査を行ったり、マイボトル普及のためのポスターや動画も制作してくれました。

12月に報告会を開いたのですが、若い学生が、環境問題を自分事としてとらえ、積極的に取り組んでいる様子に感銘を受けました。ポスターは社内にも掲示し、社員がとても喜んでいます。

環境問題は深刻ですし、どうしても暗くなりがちです。環境に取り組むことは「かっこ良いこと」という認識のもと、高校生が明るく取り組んでいる姿を見て、とても嬉しくなりました。

こうした活動は、社員にも良い影響を与えています。もともとBRITA社員は、サステナビリティへの関心が高かったのですが、さらに一体感が生まれ、モチベーションが高まっているようです。

「使い捨てない」行動変容促す

─消費者の変化は感じていますか。

数年前と比べて意識の高まりは実感していますが、自社調査の結果、ペットボトルの消費量は減っていないことが分かりました。新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあるかもしれません。

一方で、当社の浄水器の出荷は伸び続けています。特に「ステイホーム」のなかで、自宅で使う家庭用浄水器が好調です。

「サステナブルな飲料習慣に変える」ことは簡単ではありません。行動を変えるには、消費者との深いコミュニケーションが必要です。「買って終わり」ではなく「使い続けてもらう」ことが重要です。

例えば、ボトル型浄水器は、リピーターがとても多い商品です。持ち運べるといった利便性はもちろんですが、「使い捨てない」ことで環境に貢献しているという実感が継続利用につながっていると思います。

回避できたペットボトルの数の「見える化」にもグローバルで取り組んでいます。

「ビジネスの成功とサステナビリティは相反するもの」と考えられてきましたが、「ビジネスの成功とサステナビリティは両立する」ということを示していきたいです。

2021年からの5カ年計画では、サステナビリティを中心に据えました。製品だけではなく、生産時のカーボンフットプリントやオフィスの省エネなど事業活動全体のサステナビリティも追及していきます。

ペットボトルの利用が増えている現状がありますが、日本は変わり始めると、一気に変わります。語るだけではなく、実行する姿を見せていきたいです。

マイケル・マギー
BRITA Japan代表取締役社長。ミシガン大学ビジネススクールでMBA取得。フィリップス エレクトロニクス ジャパン 家電事業部S a l e s & Ma r k e t in gDirector、スリーエムジャパンAsia Pacific担当 BusinessDevelopment Managerを経て、2016年11月から現職。

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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