毛皮撤廃、コロナが後押し 輸入量95%減

【連載】アニマルウェルフェアのリスクとチャンス(8)

毛皮に反対する国際連盟ファーフリーアライアンスは、リアルファー(動物の毛皮)をゼロにするための国際署名運動を行っており、すでに60万筆の署名が集まっている。リアルファーを巡っては、半世紀前から世界中で廃止運動が繰り広げられてきた。日本の毛皮輸入量は15年前と比べると95%減っている。(認定NPO法人アニマルライツセンター代表理事=岡田 千尋)

AndrewSkowron / OpenCages

新型コロナウイルスは、この流れを大きく後押しした。アニマルウェルフェアとともに、公衆衛生のリスクを減らすために、9月に開かれるG20保健作業部会での議題に毛皮農場の廃止を含めるよう、動物愛護団体は要望している。

2020年4月以降、欧米の430以上のミンク農場で新型コロナウイルス感染が確認された。人からミンクに感染し、ミンク農場で変異種が生まれ、オランダ、デンマーク、ポーランドではミンクから人に感染したことも確認されている。

多くの宿主を経由すればするほど、強力な変異種が生まれる可能性が高まるが、一つのミンク農場に数千頭の動物がいる中で蔓延するのだからリスクは高いと言える。人の新型コロナウイルスは治療されるが、動物はそうではない。計2,000万頭におよぶミンクたちが殺された。それでもミンク農場での感染の発生リスクは継続している。

いくつかの研究や報告書が毛皮農場の危険性を明確にしている。

世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)、世界動物保健機関(OIE)から共同で出された「毛皮農場で使われる動物における新型コロナウイルス:GLEWS+(早期警告システム)リスクアセスメント」では、米国やカナダ、リトアニア、ポーランド、スウェーデンで「ミンクの毛皮農場から人への感染の可能性」が非常に可能性があるとされている。その他にも多くの国がその可能性があるとされた。

デンマークの毛皮農場では、感染が拡大した後ミンクの体内で抗体ができたが、その後3ヶ月も経たないうちに再度感染が起き、検査した動物の75%以上の動物が影響を受けていたという。ウイルスは新しい形に次々と変異している。

デンマーク国立血清研究所(SSI)は、2020年11月29日までに少なくとも4,000件のミンク変異種のヒト感染例が登録されていることをこの6月に発表し、ミンク変異種の感染が人の間でも広まっていっていることを示した。今後ミンクを介してどのような変異種が発生するかは評価不能だとしている。

今回の新型コロナウイルスに限った話ではない。動物を集約的に飼育し続ける限り、次の新たなウイルスの脅威と隣合わせである。

幸いなことに、日本の集約的毛皮農場は2016年を最後になくなった。しかし、日本は今でも約60万頭分の動物の毛皮を輸入している。衣類だけでなく、マフラーや手袋、ピアスやサンダル、バッグなどの形で多くの人や企業が未だにこの産業を支援している。

日本企業は、実際には動物の毛皮をほとんどなくしていても、いつか需要が盛り上がるときのためにファーフリーを宣言しない企業が多い。態度を明確にせず、沈黙することは、残酷でかつ危険な毛皮農場を支援することにほかならない。

そろそろ日本企業もはっきりとリアルファーにNOを示してほしいと切に願う。そしてG20に出席する日本政府もまた、毛皮農場のリスク認識し、毛皮農場をいち早く国内からなくした国として、世界中で毛皮農場をなくすためのリーダーシップをとってほしいと願う。

chihirookada

岡田 千尋(NPO法人アニマルライツセンター代表理事/オルタナ客員論説委員)

NPO法人アニマルライツセンター代表理事・日本エシカル推進協議会理事。2001年からアニマルライツセンターで調査、戦略立案などを担い、2003年から代表理事を務める。主に畜産動物のアニマルウェルフェア向上や動物性の食品や動物性の衣類素材の削減、ヴィーガンやエシカル消費の普及に取り組んでいる。【連載】アニマルウェルフェアのリスクとチャンス

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