学校を救う「フリーランスティーチャー」とは

産休や病気等で一時的に休職した教員の代わりに担任として働く「フリーランスティーチャー」という働き方がある。年度途中の休職者は年々増えており、現場のニーズも高まっている。そんな新しい働き方に2016年から挑戦されているのが田中光夫さんだ。14年間続けた公立小学校の正規職員を辞め、非常勤講師という契約形態でこれまで14を超える小学校でフリーランスティーチャーとして働いてこられた。田中さんがフリーランスティーチャーを目指したきっかけと、新しい働き方のリアルに迫る。(三原 菜央=スマイルバトン代表)

正規14年、フリーランス6年

14年間の公立小学校勤務を経て、休業に入る先生の代わりに担任代替教師を務めるフリーランスティーチャーとなった田中さんは、これまでに14の小学校で担任代替教師を務めてきた。田中さんがフリーランスティーチャーを目指したきっかけは何だったのだろうか。

「14年間正規職員としていろんな学校で働いてきましたが、先生が年度途中で病休で辞めてしまったり休職してしまうと、他の先生が自分の時間を削って休職担任の代わりをします。代替の講師募集も進まず、先生が疲弊してくる様子を目の当たりにして、これはまずいなと思い、フリーランスティーチャーの道を歩むことにしました」

公務員という枠を超えて、困っている人がいる場所、自分の力を必要としている場所で働きたかったと語る田中さんだが、安定のイメージが強い公務員から、フリーランスになることへの不安はなかったのだろうか。

「ものすごく需要があるんです。フリーランスティーチャーという肩書きで活動していることもあり、全国の困っている学校からひっきりなしにSNS経由で依頼が舞い込みます。今は積極的に講師を選択する方も増えているようです。」

最終的にはこの仕事がなくなればいい

年度途中の休職者は年々増えており、現場のニーズは高まる一方、給与面ではまだまだ課題もあるようだ。

「残念ながら給料は安い。手取りで15万円という世界なので、年齢を重ねて結婚なども考える方にとっては厳しいかもしれない。ただ、令和2年度に制度(会計年度任用職員制度)が改正されて、フルタイム講師も時間講師も週に15.5時間以上勤務していれば賞与の対象になったり、時間講師であれば給食指導や清掃指導、下校指導といった給与の対象にならない内容については交渉してお断りすることもできます。東京などは特に売り手市場だからこそ、交渉できるのは強みですよね。そうして空いた時間に自分の趣味に打ち込んだりして、自分に合った働き方だと思います」

今年の4月でフリーランスティーチャー6年目を迎えた田中さんだが、この働き方に変えてうれしかったのは同僚の喜ぶ姿を見るときだそうだ。

「この働き方って同僚の皆さんからものすごく喜ばれるんですよ。皆さん本当に困っているから『よく来てくださいました!』と、諸手を挙げて歓迎してくださいます。約束の期間が終わった後にも、またぜひうちの学校に来てほしいとリピートしてくださったり。お役に立ちたいと思ってこの働き方を選んだので、そういった同僚の皆さんの様子はとてもうれしいです。ただ、最終的にはこの仕事がなくなればいいと思ってるんです。僕の仲間でもフリーランスティーチャーは増えてきてるけども、正規採用された人が自分らしく働けるような環境になれば、教員を辞めたり休む必要もなくなるので、講師は必要なくなるじゃないですか。そういう社会になってくれればいいなと願いながら、働き方の発信も積極的にしているところです」

mihara

三原 菜央(スマイルバトン)

株式会社スマイルバトン 代表取締役/iU客員教員 1984年岐阜県出身。大学卒業後、8年間専門学校・大学の教員をしながら学校広報に携わる。その後ベンチャー企業を経て、株式会社リクルートライフスタイルにて広報PRや企画職に従事。「先生と子ども、両者の人生を豊かにする」ことをミッションに掲げる『先生の学校』を、2016年9月に立ち上げる。2020年3月にボーダレス・ジャパンに参画し、株式会社スマイルバトンを創業。著書に「自分らしく働く パラレルキャリアのつくり方(秀和システム)」がある。執筆記事一覧

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