サステナブルな縄文人、お役に立ちたい令和人

2021年7月27日、世界文化遺産に登録された「北海道・北東北の縄文遺跡群」。この世界遺産入りを受け、青森県の三内丸山遺跡を中心に、ちょっとした「縄文ブーム」が世間を賑わせています。(那須 りな)

三内丸山遺跡センター所蔵【掘立柱建物(復元)】
三内丸山遺跡センター所蔵【大型竪穴建物(復元)と大型掘立柱建物(復元)】

普段、私たちが「縄文時代」と聞いて思い浮かぶのは、縄文土器・狩猟民族・彫りの深い顔立ち、といったところでしょうか。では、約1万年もの間、平和で豊かな時代が続き「理想的な持続可能社会」ともいわれる縄文とは、実際にはどんな時代で、縄文遺跡および縄文文化のどのような部分が、「人類共通のかけがえのない遺産」として世界に認められたのでしょう。

縄文文化を紹介し、研究支援活動を行う「NPO法人国際縄文学協会」によれば、縄文時代の定義は「土器を持った狩猟採集文化」。そのはじまりは17,000年ほど前とされており、当時は氷河期の真っ最中でした。約11,000年前に氷河期が終わり、いわゆる「森と海の時代」に入ります。この頃の日本国内には、ドングリやクリ・クルミが実る豊かな落葉広葉樹の森が広がり、海面上昇や土砂の堆積によって、魚介類が豊富に育つ環境が形成されていたといいます。

この「森と海の時代」には、大きな集落が発生し定住生活が縄文の人々に根付きました。旧石器時代に比べ、獲物の変化により武器も変遷を遂げ、弓矢や釣り針が主流の技術となります。そして生活拠点としてのムラには、住居・墓・祭りのための建物が建ち並び、遠方との交流交易も行われ、土偶や装身具といったものも発達した、豊かで成熟した社会だったようです。

驚くべきことに、縄文時代は約1万年にわたり主だった戦争もなく、優れた技術と高い精神性をもち自然と共生し家族と和やかに暮らす、まさに「元祖サステナブル」な時代でした。むしろ、野生資源に依存していた点で「サステナブルでなければならなかった」とも言えます。

そして、階層化社会が目立つようになる縄文後期まではとくに、狩猟・採集・漁生活を基本とし、日本列島の各地に血縁による共同体を核に助け合いながら、生命を生み出す物や現象を敬い、老人や子どもたちに手を差しのべる平和な暮らしを長期的に持続させていました。

もちろん1万年の間には、地域と時期によって様々な形態の社会構造がありましたが、全体で実現したい目的に向けて、人と人が信頼関係で結びつき力を発揮していた縄文時代のひとつのあり方は、これからの組織の理想的な在り方といわれている、フラットな関係性を持ち組織全体を生命体として捉える「ティール組織」とも、根幹が通じるように思います。

この「元祖サステナブル」な縄文時代は、理想的な持続可能社会でもありました。労働と生活が一体化し、皆が集団のために活躍し、共に育ち共に生きていたと、歴史は語っています。「全ての課題を、同時に、皆で解決する」という縄文文化は、現代のSDGsの精神にも通じるところがありますね。

SDGsが国連で全会一致で採択されたように、世の中の流れは確実に変わっています。「これからの時代」のキーワードになるのは「自分の力を、誰かのために役立てたい」という、縄文文化から私たち日本人に脈々と受け継がれている「利他の心」ではないでしょうか。私が広報を務める株式会社リジョブも、利他の心を大切に「事業を通して社会課題を解決する」CSV経営を掲げるソーシャルベンチャーです。

環境考古学者であり、縄文文化を探求する内山 純蔵 先生(前:富士山世界遺産センター常勤研究員)によれば、縄文文化を学ぶことは、「かつて日本列島に生きた人々が成し遂げた業績を知ることで、人類の大きな可能性に触れること」だといいます。文化には多層性・歴史性・流動性があり、その優劣を判断するのではなく、「未来に多様な文化を築くために先人たちの成し遂げた事跡を学ぶことで、新たな文化を生み出し続けられるのが、人類の素晴らしさ」であり、「一方で、人間が作った社会だからこそ完全体はない。理想化しすぎず、成功からも失敗からも学ぶ姿勢が大切」だとも語っていただきました。

環境考古学者の内山純蔵先生

私が新卒入社した1999年頃は、ネット関連ベンチャー企業の台頭期。バブル経済は崩れつつあったものの、そこここに「成果主義」「実力主義」ムードがまん延し、資本主義競争を生き抜くために経営層が全体方針を決め、合理的な計画を立てて業務遂行にまい進する「達成型組織」が幅を利かせていました。

やがてリーマンショックを経て平成後期になると、組織の中にも「多様性」「相互理解」「社会貢献活動」といった意識が徐々に芽生え、そんな平成を経て令和となり、「誰かの役に立ちたい」と思う個人や組織が結ばれる時代へと、組織や社会の在り方が確実に進化していることを実感します。

今回の「北海道・北東北の縄文遺跡群」世界文化遺産入りをきっかけに、縄文土器や遺跡自体から少し目線を広げて、現代にも活かせる縄文の知恵・文化に触れてみてはいかがでしょうか。

三内丸山遺跡センター所蔵【大型掘立柱建物(復元)】

那須 りな:
PRSJ認定 PRプランナー
株式会社リジョブ 広報担当
国際縄文学協会 会員

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那須 りな(リジョブ 広報)

早稲田大学社会科学部 および 大原医療福祉保育専門学校卒。大学卒業後、PR会社を経て専門学校で保育を学び、音楽療法や障がい児療育に携わった後、ソーシャルベンチャー「リジョブ」の広報担当に。「事業を通した社会課題の解決」に若いメンバーと共に挑む、時短広報ワーキングマザー。オルタナでは、不定期で“社会性”に縁あるコラムを執筆。

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