女性向け国際起業家コンペが今秋、日本初上陸

シンガポール発女性IT起業家向けの大規模な国際コンペ「She Loves Tech(シー・ラブズ・テック)」が今秋開催される。7回目となる今年、初めて日本でその予選会が行われ、日本から多くの参加者が見込まれる。過去に参加した起業家は、これまでに総額1.5億ドル(165億円)の資金調達に成功しているという。「女性なしには、世界の大きな問題は解決できない」というミッションを掲げ、女性の起業家育成をコンペ、国際会議、教育の3つの柱で行っている。

昨年開催されたSheLovesTech2020のゲストスピーカーと審査員たち。下段右のヴァージニア・タンさん(左)、リアン・ロバーズさん(右)、下段左のリア・シーさんが共同創業者の三人だ。

スポットライト回避が資金調達を困難に

She Loves Techは、女性起業家の資金調達のギャップを解消することを目的として設立されたグローバルプラットフォームだ。女性起業家たちのエコシステムを構築し、コンペティションや国際会議を通じて、女性起業家たちの強さと、可能性を引き出す。

女性起業家として、複数の会社を起業してきたリアン・ロバーズさんと二人の共同創業者たちは、2015年自分たちが経験してきた資金調達の大変さが、「女性起業家の素晴らしさが世間に知られてないゆえだ」と考え、「She Loves Tech」という国際的な女性起業家向けのコンペティションを立ち上げた。

シンガポールのライフスタイルサイト「プレステージ」のインタビューに応じたロバーズさんは、「女性経営者たちは、時に仕事そのものに集中してしまい、スポットライトを浴びることを求めていないことがある。それが資金調達を難しくしている原因の一つだ」とも語っている。

実際に多くの女性起業家が、資金調達が男性に比べて困難であることが指摘されてきた。

会計コンサルティング会社のEYが、世界21カ国、年間売上高100万~30億米ドル企業の経営幹部約2700名を対象に2018年に行った調査によると、女性起業家の17%が、最大の課題は「資金調達」だと回答しており、外部からの資金調達ができないと回答した起業家は52%に及んだ。一方、男性起業家は30%に留まっている。

コロナ禍でさらに伸びを示したShe Loves Tech

7年前、100名の女性起業家が参加したローンチ大会以降、年々参加者を伸ばし、コロナ禍で開催された昨年の2020年の大会には、3000人以上の参加者を集めたというShe Loves Tech。

今回、新しい予選会開催国の一つとして選ばれた日本で窓口を担当しているベンチャーキャピタルのR3iベンチャー、リーサ・スロードルさんは「2020年に100%バーチャル化したことで、オフラインでは実現できなかったより多くの人々へ、リーチが可能になった。そしてより多くの起業家を支援できるようになった」と話す。

予選開催を行った国は30カ国ほどだったというが、応募者は世界70カ国から集まったという。例年だと、ファイナリストをメイン開催国に集め、ブートキャンプやファイナルイベントを行うというが、昨年は全ての工程をバーチャル化得せざるを得なかったという。しかし「グローバルイベントの優勝者だけでなく、参加したすべての起業家に、具体的な価値を提供することができた」と話す。

今年度も100%バーチャルで行うというShe Loves Tech。「これまで、日本の多国籍企業と仕事をしてきた中で、日本の女性創業者たちから情熱、決意、意欲、そしてグローバルな願望を強く感じている」と語るスロードルさん。この国際大会を通じて、参加したスタートアップ企業は、最大50000ドル(550万円)の賞金を得ることができ、その他にもメディア賞やメンターシップ賞と言った賞が用意されているという。

参加者は5つのワークショップで構成される1週間のバーチャルエキスパートブートキャンプに無料で参加できる。締め切りは8月15日午後11時59分(GMT +8)だ。

2019年のファイナルの様子。新型コロナが落ち着いたら、またオフラインでのイベント開催を再開したいと話す。

teramachi

寺町 幸枝(在外ジャーナリスト協会理事)

ファッション誌のライターとしてキャリアをスタートし、米国在住10年の間に、funtrap名義でファッションビジネスを展開。同時にビジネスやサステナブルブランドなどの取材を重ね、現在は東京を拠点に、ビジネスとカルチャー全般の取材執筆活動を行う。出稿先は、Yahoo!ニュース、オルタナ 、47ニュース、SUUMO Journal他。共同通信特約記者。在外ジャーナリスト協会(Global Press)理事。執筆記事一覧

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キーワード: #ジェンダー/DE&I

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