パルスオキシメーターは届かなかった

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私は8月5日にPCR検査を受け、新型コロナウイルス陽性が判明しました。いまは自宅療養期間を終えて、仕事に復帰しています。(オルタナS編集長・池田真隆)

コロナ感染者が増えていることは毎日ニュースで見ていましたが、どこか「他人事」で、まさか自分が感染するとは思ってもいませんでした。幸い軽症だったので、入院はせず自宅療養で済みました。

ですが、コロナの後遺症と思われる症状が今でもいくつか出ています。私がコロナに感染して分かったことを書き連ねます。

■7月31日(土) 1回目のワクチン接種(ファイザー)を受ける

体調を崩したのは夜22時頃でした。それまではいたって健康体でしたが、この日の14時に杉並区の会場で1回目のワクチン接種(ファイザー)を受けたのです。

この日の気温は30℃を超え、汗をかきながら会場に向かいました。接種会場がある公園に入ると大きな芝生の広場が広がり、子どもたちが遊んでいました。

接種会場はその先に小さく見える「2階建ての休憩所」でした。暑い盛りの14時に予約したことを後悔したことを覚えています。

なるべく日陰を探して広場を迂回しました。10分程度、息を切らしながら歩き、ようやくたどり着きました。入口すぐの階段を上がると、2階が接種会場になっていました。

冷房が効いた快適な空間を期待していたのですが、そこは全面ガラス張りのため、夏の強い日差しが容赦なく降り注ぎ、じっとしていても汗をかくような部屋でした。

接種後の15分の経過観察中もパイプ椅子に座っていましたが、身体の右半分にずっと日差しが当たってなかなか辛かったことを覚えています。

打ったばかりの左腕には多少の痛みもあり、携帯を手に取る気にもならず、手持ぶさたに過ごしていました。前方の大型テレビには少しでも気分を紛らすためか、北極の映像とハワイと思われる海岸を笑顔で走り回る子どもたちの映像が無音で繰り返し流れていました。

接種後は問題なく、アナフィラキシーなどの異常も出ませんでした。ワクチン接種にちょっと緊張もあったため、無事に済んで安堵したことを覚えています。

待機中は見る気もしなかった芝生広場の光景も絵になり、これも何かの記念だと思い、帰りに携帯で写真に収めました。ワクチンを打ったことによる達成感もあり、意気揚々とした気分で帰路につきました。

ワクチン接種後に撮影、右側の建物が接種会場=7月31日、東京都杉並区下高井戸の「あおぞら公園」

異変が起きたのはその日の夜でした。夜ご飯を食べ終えて、自宅のソファに座りテレビを見ているうちに、急に咳と鼻水が出るようになりました。頭も少し朦朧としてきたので、その日は早めに寝ました。

■8月1日(日) 熱は38.5度。今思うと、この時にすでに発症

目を覚ますと倦怠感と関節に痛みがあり、熱を測ると38.5℃ありました。少し目の乾きもあり、食欲もありませんでした。

ワクチンの副反応かと思い込んでいましたが、今思うと、この時にすでに発症していたのでしょう。

■8月2日(月) 咳と鼻水、倦怠感などの症状は取れなかった

市販の風邪薬を飲みながら休んでいると熱は夕方には36℃に下がっていました。ですが、咳と鼻水、倦怠感などの症状は取れなかったので、大事を取って3日は会社を休み、翌日から仕事に復帰しました。

■8月4日(水) 「ワクチンの副反応に咳と鼻水はない」

在宅ワーク中、咳と鼻水が治まらないことが気になり、インターネットで調べると、「ワクチンの副反応に咳と鼻水はない」という書き込みを見つけました。まさかと思い、24時間対応している東京都の新型コロナウイルスワクチン副反応相談センターに電話しました。

■8月5日(木) 駐車場につくった仮設会場でPCR検査を受ける

センターの人から、自宅近くの医療機関を紹介してもらい、にPCR検査を受けることになりました。PCR検査を受けるにあたって、いくつか注意事項がありました。

・検査は朝8時半から。検査の30分前にはうがいと歯磨きは禁止
・病院に行くために公共交通機関を使ってはいけない
・8時半ちょうどに病院入口前から電話すること(遅刻厳禁&早く到着しても病院内には入ってはいけない)

最寄り駅から2駅先だったので、当然のように電車で行くことを考えたのですが、「電車、バス、タクシーでは来ないでください。病院には入らないで、入口前から電話して下さい」と強く言われて、この時に初めて自分がコロナにかかったことを実感できたような気がします。

2駅分といっても、歩いて30分程度で行ける距離でした。その病院は商店街の外れにある一軒家のクリニックで、玄関横にある駐車場を仮設のPCR検査室にしていました。

8時半ちょうどに病院前から電話すると、駐車場の前に来てくださいといわれ、少し待っていると、水色の防護服を着た先生が出迎えてくれました。50代くらいのメガネをかけた男の先生でした。

いつもなら、病院に入ると受付で待ちますが、受付はありません。そもそも人がいないので名前を呼ばれることもありません。

そこには、検査キットが入っていると思われる段ボール箱が4箱ほど無造作に積まれ、空調機、ふた付きの大きなごみ箱が置かれていました。いずれも応急的につくったようです。

先生は壁際にある丸椅子を指差すと、椅子の上に置かれた問診票に症状を書くように言いました。その後、先生からスポイトのようなものを渡されて、指定の線まで唾液を入れるように指示されました。先生は終わったら呼んでくださいと言うと、院内に入っていきました。

しばらくして先生が戻ってくると、ビニール袋を手にしていました。その中にスポイトを入れ、さらに長方形の小さな段ボール箱にそのビニール袋を入れました。

「熱は出ていないので、おそらく風邪でしょう。明日には検査結果が分かるので、また電話します」と言われ、咳止めと鼻水止めの薬を処方してもらいました。

■8月6日(金) 青天のへきれきの「コロナ陽性」

処方してもらった薬の効果もあり、咳と鼻水はほぼ治っていました。熱もなく、十中八九「陰性」だろうと検査結果を待ちながら、仕事をしていました。

携帯電話が鳴ったのは15時前のことです。電話に出ると、開口一番に「陽性」と診断されました。ウイルスが濃く出ていたらしく、先生から体調を心配されたのですが、熱はなかったので、その時は「問題ありません」と返しました。

これからのことを尋ねると、杉並区の保健所から連絡が来るので、その指示に従って動いてくださいと説明を受けました。

まさか自分がコロナに感染するとは思ってもいませんでした。電話を切った後、しばらくは茫然としていましたが、不安や心配はなかったです。

というのも、そもそもコロナに感染するとどうなるのか、その時はまだ知識が浅かったので、事態の深刻さを十分に理解できていなかったからだと思います。

会社に検査結果を伝えた後、とにかく保健所からの連絡を待ちました。いつまで自宅療養になるのか、食事はどうすればいいのか、どうしたら完治したことになるのか、そもそもどこで感染したのか、後遺症があると聞くがどのような症状なのか――聞きたいことが山ほどありました。

インターネットでコロナに感染したときの症状を調べながら、気付いたことをメモして、保健所からの電話を待ちました。夕方を過ぎても電話は掛かってきませんでした。

杉並区の保健所の受付時間は平日8時半から17時まで。明日からは3連休に入ってしまうので、なんとか今日電話がほしいと思い、こちらから電話を掛けてみました。

保健所につながったのですが、電話口の担当者は「いまは対応しきれていないので、電話が掛かってくるまで待っていてください」と言われました。

保健所の受付時間は17時に閉まるので、それ以降はこちらから保健所に電話することはできないのですが、保健所の担当者からは17時以降に電話が掛かってくることがあるとのことでした。

8月7日(土) パルスオキシメーターは届かなかった

電話は夜に掛かってくるかと思ったのですが、6日には、掛かってきませんでした。どうしようと思っていたのですが、8日の午前11時頃に電話は掛かってきました。保健所の担当者からは、

  • 症状が出た日はいつか
  • 症状が出た日の10日前の行動(濃厚接触者と感染経路の特定)
  • 症状が出てから10日間は自宅療養期間(家から出ることは禁止)
  • 自宅療養期間中は、厚労省の感染者情報把握システム「HER-SYS」に体温、酸素飽和度、咳・鼻水、息苦しさ、倦怠感、嘔吐、下痢、意識障害、食欲などの項目を毎日記入すること
  • この後、東京都福祉保健局の自宅療養者フォローアップセンターから電話がくるので待つようにと指示

(東京都で水や食料の宅配をしているが、届くまで時間がかかるから民間サービスを使うことを推奨、酸素飽和度を測定する「オキシパルスメーター」の貸し出しもしているので、必要なら頼むようにと説明を受けました)

杉並区の保健所の担当者とは約30分電話して、咳と鼻水が出た7月31日がコロナ発症日となりました。10日間は自宅療養期間になるので、8月10日まで自宅で休むように言われました。その時に症状(熱や咳・鼻水など)が出ていなければ、体内のコロナウイルスの感染力はなくなったことになるので、8月11日から正常に復帰できるようになります。

杉並区の保健所との電話が終わって、1時間もしないうちに東京都福祉保健局の自宅療養者フォローアップセンターから電話が掛かってきました。フォローアップセンターからは、現在の体調や自宅療養期間中の注意事項(外出禁止など)の説明を受けました。

その次に、私の自宅療養期間が8月10日(火)までで、その日(7日・土)から9日(月・祝)までは杉並区の保健所は電話が通じないので、何かあったらフォローアップセンターに電話するように言われました。最後に配食サービスとパルスオキシメーターの貸し出しについて聞かれました。

パルスオキシメーターは貸してほしいと伝えると、「詳細は杉並区の保健所から再度、電話させます」と言われ電話は終わりました。ですが、このパルスオキシメーターは自宅療養期間中に届きませんでした。電話も掛かってきませんでした。

(自宅療養期間後(8月10日)に、杉並区の保健所の担当者にそのことを伝えると、「症状が出ていないなら(パルスオキシメーターで測定していなくても)問題ないです」との説明を受けました)

8月7日時点の健康状態は、体温は36.4℃で問題なし。咳と鼻水は少し出るくらい。倦怠感や吐き気、下痢などの症状はありませんでした。

ただ、一つ大きな症状としては、嗅覚障害を起こしていました。これまでも匂いがしない気がしていたのですが、試しに醤油が入ったペットボトルに鼻を近づけてみたのですが、何も匂いませんでした。でも、幸いなことに味覚はありました。

■8月8日(日) 体温は36℃、咳と鼻水はほぼ治まる

この日の体温は36℃で問題なく、咳と鼻水はほぼ治りました。8日は特に症状も出ずに過ごして、翌日を迎えました。

■8月9日(月) 食欲低下、目がひどく乾く、息苦しさと嗅覚障害

熱もなく、明日が自宅療養期間の最終日なので、特に目立った症状はなく無事に終えられると思っていたのですが、次の症状がありました。

・食欲低下(一日中食べなくてもお腹が減りません)
・目がひどく乾く(普段からコンタクトレンズを長時間つけているのですが、この日は10分つけるだけで、ドライアイになった感覚でした)
・息苦しさ(鼻から呼吸がしづらくなり、口からの呼吸で息を整えました)
・嗅覚障害(まったく匂いがしません)

■8月10日(火) 「感染者はPCR検査を受けないで欲しい」

この日も熱、咳・鼻水はありませんでした。昨日から気になっていた、食欲低下、目の乾き、息苦しさは若干あったのですが、杉並区の保健所に伝えると、じきに治るだろうとのことで、翌11日から正常に復帰できることになりました。

今後、第3者にコロナが完治したことの証明をしたいので、PCR検査を受けたほうがよいかと尋ねると、「受けないでほしい」と言われました。その理由は二つです。

1:自宅療養期間を終えたばかりの人がPCR検査を受けると「陽性」になる可能性が高い。コロナウイルスの死骸が体内に残っているため。ただし、このウイルスの感染力はありません。

2:自宅療養期間を終えた人が「陽性」になっても、保健所として対応することができない。(現時点でキャパオーバーの状態なので、問い合わせを受けても対応できないという旨を言われました)

では、どうすればいいのかと尋ねると、杉並区から自宅療養期間を終えたことの通知書を発行するので、その通知書を証明書として活用してほしいとのことでした。電話では混雑状況によって、通知書が届くまで2週間程度かかるといわれましたが、4日後の8月14日(土)に通知書は届きました。

杉並区から届いた検査結果通知書

また、この日(8月10日)に8月5日に受けたPCR検査の「検査成績書」が自宅に郵送で届きました。

■8月11日(水) 突然、全身に発疹が出る

自宅療養期間を終えたこの日、体温は36℃で問題ありませんでした。ですが、朝起きると、両腕と両膝に発疹が広がっていました。また、頭皮にも発疹ができており、全身にひどいかゆみがありました。

皮膚科の先生に診てもらうと、コロナとの関連性はわからないが、ワクチンによってアレルギー反応が起きたのかもしれないとのことでした。処方してもらった薬のおかげで、この発疹は翌日の8月12日(木)にはすっかり治りました。

■8月14日(土) 突然、不安障害から「過呼吸」に

嗅覚障害はありますが、12日と13日は特に問題なく過ごしました。異変が起きたのは14日でした。この日は起きてから、少し息苦しさがありました。鼻で息がしづらく、意識して定期的に深呼吸しないと、息が切れる状態がありました。

後遺症の一つだと思い、気を付けて過ごしていたのですが、夕方過ぎからその症状が悪化していき、夜10時頃になると両腕にしびれが出てきました。よく、肘をぶつけるとジーンと痛む、いわゆる「ファニーボーン」が両腕に出ている状態でした。

意識も朦朧としてきて、体性を横にしても苦しさは増すばかりでした。唯一、椅子に座っているときが一番楽でした。

座りながら深呼吸をしたのですが、息切れが続き、しびれが両足と胸周りにも及ぶようになりました。生命の危機を感じたので、24時間対応している東京都の新型コロナウイルスワクチン副反応相談センターに電話しました。

このセンターは、ワクチンの副反応に対応しており、本来は自宅療養期間を終えた人向けの相談窓口ではありません。ですが、この日は休日の夜だったので、私が知る限りで24時間対応しているところはここしか思いつかなく、ダメ元で電話を掛けました。

センターの人は優しく対応してくれました。症状を聞き、「#7119」に電話してくださいと教えてくれました。これは、消防庁の救急安心センターの電話番号です。病院に行くか、救急車を呼ぶか、このセンターが判断します。

さっそく、センターに電話して、症状を伝えました。話している最中も症状は悪化しており、携帯電話を手に持つことすら辛い状況でした。救急隊が自宅に駆けつけてくれることになり、待つこと約10分、携帯電話が鳴りました。

自宅に向かっている救急隊からで、「これから到着します。無着色のマスクを2重にして、玄関前で待っていてください」と言われました。電話を切るとすぐにインターフォンが鳴り、玄関で手当てを受けました。

血圧などを測定した結果、特に異常はなく、診察の結果、不安障害から起きる「過呼吸」と言われました。過呼吸とコロナの関連性は不明ですが、救急隊はおそらく精神的なものが原因ではないかと説明してくれました。「とにかく落ち着けば問題ないです」と何度も言ってもらいました。

入院する必要はなしと判断され、同意書にサインすると15分程度で救急隊は帰っていきました。

思い返すと、その日の日中はこのコラムを書いており、コロナに感染してこれまでの日々を思い返していました。また、後遺症などをネットで調べてもいました。症状が軽かったので、思い返したといっても特に恐怖を感じた訳ではありません。ですが、結果として、呼吸が荒くなったので、意識していないところで体内に何かが起きたのかもしれません。

■8月15日(日 嗅覚障害の薬を処方してもらう

翌日は日曜日でしたが、念のため肺炎かどうか調べておきたく、救急外来で診療を受けてきました。肺炎ではなく、救急隊の診断通り、過呼吸でした。過呼吸を起こしたときの対処法を教えてもらい、コロナの後遺症で嗅覚障害が起きていることを伝えると、薬を処方してもらいました。

■8月16日(月) 嗅覚障害、目の乾き、食欲低下などは残る

その薬で嗅覚が戻るかどうかは分かりません。現時点で治っていない後遺症は、嗅覚障害、目の乾き、食欲低下(若干改善)、息苦しさ(若干改善)などです。また、年初から歯の根幹治療をしていて、その薬も服薬しているので、日常的に眠気は強く感じるようになりました。

今回の感染経路は、保健所とも話して「不明」となりました。体調を崩した7月31日の前の行動を振り返ったのですが、どの日も特定できる要因が十分ではなかったです。

ここまでコロナを発症してからの記録を書きました。医療機関の先生や東京都や区、消防庁の担当者の方も一人の人間なので、本人の命を守らないといけません。その中でも親身になって対応して頂いたことに感謝しています。

幸い、私は軽症で済んだのですが、それでも過呼吸になったときは本当に命の危機を感じました。まだ医学的にコロナの症状や治療方法は分かっていないことが多いです。現時点で、日本でコロナに感染した人は116万人と、総人口の1%弱ですが、この記録が誰かのお役に立てば幸いです。

■参考情報:

東京都新型コロナウイルスワクチン副反応相談センター(土日祝含め24時間対応):03-6258-5802
消防庁救急安心センター:#7119

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #新型コロナ

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