フォーマルウエアにもサステナブルの波

レディスフォーマルウェアの東京ソワール(東京都港区)は、10月31日まで礼服のリサイクルキャンペーンを全国の量販店形態56店舗で実施中だ。着用回数の少ないブラックフォーマルを古くなったから捨ててしまうことに対して、「もったいない」という声に押され、アパレル業界の環境問題に取り組む同社が企画した。回収した服は、日本環境設計(川崎市)が行うリサイクルプロジェクト「BRING」を通じて、衣類の原料や自動車内装材に生まれ変わるという。(寺町幸枝)

東京ソワール「ソワール ベニール」のアンサンブル。再生ポリエステルと植物由来の「トリアセテート」を組み合わせた素材を一部利用している

■「服の循環への取り組み」をアピール

東京ソワールは2019年 2月に、百貨店との取り組みの中で着用しなくなったフォーマルウエアの「回収」キャンペーンを初めて行った。その反響は大きく、たった6店舗で展開されたキャンペーンに、200着以上の衣類が集まった。その後、リサイクル会社、日本環境設定のリサイクルプロジェクト「BRING」に参画し、回収した衣類を服の原料にする「服の循環」活動に協力するようになったという。

「ファストファッションに比べると、フォーマルウエアは比較的長く着用されるため、廃棄の問題は少ないのですが、同じアパレル業界が抱える問題解決のためにも、服から服への循環に取り組む活動に関わることが大切だと考えています」と、東京ソワール広報の田島由紀子さんは話す。

同社は現在、百貨店、量販店ルートを含め、774の実店舗とオンラインストアを展開するフォーマル界のトップランナーだ。今回、過去最大規模の56店舗でリサイクルキャンペーンを展開するにあたり、回収実施を行う店舗を対象にキャンペーンに関する特別研修を開催したという。

研修を通じてキャンペーンの目的だけでなく、SDGsの各ゴールについての説明といったサステナビリティ全般の情報を販売員と共有し、この活動の重要性や目的、意義を、店舗を通じて消費者に伝えるのが狙いだ。

■全ての商品を環境改善に貢献できる製品に

さらに2021年の春夏シーズンから「サスティナブルフォーマル」コレクションを登場させた。このラインは、①再生ポリエステル生地を一部利用した製品、②自然由来の素材を使用した製品、③省エネ貢献型製品(ウォッシャブル対応や抗菌・防臭裏地)  のいずれかに該当する製品の総称だ。

「2020年ごろから原糸メーカー各社が提案している再生ポリの質が、求めているレベルに達しました。ブラックフォーマルは特に黒色の表現が非常に重要。原糸メーカー各社は再生ポリの布に力を入れており、十分イメージする製品が作れるようになりました」とサスティナブルフォーマルについて話すのは、商品企画部長の秋山和城さんだ。

現在、百貨店で展開するコレクションの8割、量販店で販売するラインの4割が、この「サスティナブルフォーマル」に該当するという。価格面で他の商品に比べてまだ高め、ということで販売面では突出した伸びはないというが、最終的にはカラーフォーマルも含め、東京ソワールが展開する全ての商品を環境問題改善に貢献できる製品に切り替えていく方針だ。

「(東京ソワールのキャンペーンを通じて)お客様に、”服の循環の和”を知ってもらうきっかけになれば」と話す田島さん。特別な時に着用する一着が、地球にとっても嬉しい一着に。そんな時代がすでに到来している。

teramachi

寺町 幸枝(在外ジャーナリスト協会理事)

ファッション誌のライターとしてキャリアをスタートし、米国在住10年の間に、funtrap名義でファッションビジネスを展開。同時にビジネスやサステナブルブランドなどの取材を重ね、現在は東京を拠点に、ビジネスとカルチャー全般の取材執筆活動を行う。出稿先は、Yahoo!ニュース、オルタナ 、47ニュース、SUUMO Journal他。共同通信特約記者。在外ジャーナリスト協会(Global Press)理事。執筆記事一覧

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