自民総裁選4候補が考える「脱炭素」とは

オルタナ編集部は、9月29日に投開票が迫る自民党総裁選挙を前に、河野太郎氏、岸田文雄氏、高市早苗氏、野田聖子氏の4候補に脱炭素政策に関するアンケート調査を行った。「菅政権が打ち出したカーボンニュートラル」、「気候変動の原因」、「今後伸ばしていくべき再エネ」、「エネルギー基本計画における再エネ比率」、「脱炭素における原発の必要性」の5つの質問に対する、各候補の回答を紹介する。(オルタナ編集部・長濱 慎)

自由民主党 総裁選挙2021の特設サイトから

再エネとともに原発の再稼働が必要不可欠という回答に

質問1「菅政権の2050年カーボンニュートラルを支持するか」

4候補とも「支持する」と回答し、高市氏、野田氏は以下のような補足コメントを寄せた。

高市氏「脱炭素目標達成と日本の産業の維持・発展のためには、SMR(小型モジュール炉)や安全性の高い核融合炉への投資も含めた、安定的な電力供給体制の整備が必要である」

野田氏「極めてハードルが高い目標だが、官民あげての政策資源を投入する」

質問2「気候変動は、人間の経済活動によるものと考えているか」

河野氏「その通り。気候変動の緩和のため、あらゆるアクションを取っていかねばならない」

岸田氏「科学的検証が前提だが、そうした部分もあると考えている」

高市氏「人間の経済活動による温室効果ガス排出は、気候変動に影響していると考えている」

野田氏「原因は複数あると思うが、人間の経済活動は大きな要因の一つだと考える」

質問3「今後伸ばしていくべき再エネは何か」

河野氏「あらゆる分野。新技術も活かしながら、全体として伸ばしていきたい」

岸田氏「日本の置かれた状況を踏まえ、あらゆる可能性を追求していくべき」

高市氏「日本の国土面積の約66%を占める森林と約11%を占める農地において、バイオマス発電や中小水力発電などを推進するべき」

野田氏「日本の強みを活かせる地熱発電を、カーボンニュートラルが言われる以前から支援してきた。再エネはあらゆる可能性を排除せず、バランスよく伸ばすべき」

質問4「エネルギー基本計画における、2030年の再エネ比率36〜38%をどのように考えるか」

河野氏「エネルギー基本計画を尊重するものの、再エネの水準については諸外国と比べても非常に低く、今後の技術の導入や規制緩和によって、さらに伸ばしていけるものと考えている」

岸田氏「十分である」

高市氏「十分である。日本の産業の維持・発展が困難となる数値であり、再エネの可変動性を考慮した数値設定が不可欠である」

野田氏「野心的な目標として定められたという前提で、十分だと考える」

質問5「2050年脱炭素の実現に、原発は必要か」

河野氏「現行の原発の再稼働が必要。脱炭素を目指す上で原発は重要な電源の一つであり、安全・安心が確認されたものから、国民の理解を得た上で再稼働していくことが必要だ」

岸田氏「現行の原発の再稼働が必要。新増設の議論の前提としては、再稼働を通じた国民の信頼確保が不可欠である」

高市氏「新増設と再稼働が必要。国家プロジェクトとして小型モジュール炉の地下立地や、新技術の国産核融合炉の技術開発を推進するべき」

野田氏「新増設と再稼働が必要。電力については安定性と多様性を重要視している。世界一の安全性を前提に、多様な電力をバランスよく持つべき」

高市氏がいう核融合炉とは、重水素とトリチウム(三重水素)を用いた発電設備だ。日本を含む7ヵ国・地域による国際的プロジェクト「ITER計画」では、2035年の核融合運転開始を目標としている。

また、4候補とも、再エネとともに原発の必要性を強調した。そのためには国民に対する公正な情報公開とアカウンタビリティ(説明責任)が重要になることは、いうまでもないだろう。

S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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キーワード: #脱炭素

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