ファッションにおける寄付文化とは

多様で健康的なファッションの未来を考える(10)

ファッションで寄付と聞くとどのようなことを思い浮かべるだろうか?ファッションにおける寄付の形とその影響について今回は考えてみたいと思う。(一般社団法人unisteps共同代表=竹村 伊央)

ファッションで寄付と聞くとどのような事が浮かぶだろうか?

売上高の一部を途上国に寄付するやり方がいままでは主流だった。フェアトレードのように現地のNGOと密にコミュニケーションを取っている場合は良いが、商品のイメージアップのためだけに寄付制度が利用され、寄付する側はお金だけを払い、実際にどのようにそのお金が使用されているかまで関与していないとケースも過去には存在した。

寄付をされる側は何もしなくても定期的に収入を得られるため、現地のモチベーションを上げるどころか、働かなくなってしまうというケースも出てきたほどだ。アフリカでは、先進国から送られてくる古着が国内のアパレル市場を圧迫し、古着の輸入に関税をかけるまでに至ったケースもある。

最近は洋服の寄付もあげられるだろう。自分の着なくなった洋服を途上国に寄付する仕組みだ。英語のことわざで“One man’s trash is another man’s treasure.(誰かのゴミは他の誰かの宝物である)”と言われている通り、物が循環するシステムは大変素晴らしいと思う。

ただ、まだ現在のファッションは転換期にあり、セカンドライフを考えた洋服の楽しみ方や製品の作り方がされていないのが現状である。毛玉が付いたセーターや、色褪せたTシャツ、汚れが付いてしまったワンピースは、どこの誰も着たくはないと思う。セカンドライフを考えたものづくりや服との付き合い方が必要と感じる。

一見、「寄付」と聞くと「善」をイメージするが、上記にある無責任な寄付のやり方だと、かえって悪い歯車を回してしまっているように感じる。寄付=良い事は絶対ではない事がわかる。寄付はお金やものを与える行為そのものではなく、何をどのように達成するのか?成果と目的が重要だと思う。

上記の代表例はクラウドファンディングだろう。今では一般化してきており、小規模ブランドの新商品販売に仕組みが使われてきたりしている。この商品が欲しい!よりも、このブランドを応援したい!と感じて購入するのがクラウドファンディングの寄付の仕方だ。

これは、日本でも少しずつ言われるようになってきた「買い物は投票」という考え方に通じると思うし、生活者は自分のお金をどこに使うのかを考えるきっかけになる。また、発信者はそれがどのように使用されるのかを明記することが一般的で透明性の発信にも繋がる。

この様に寄付の形も少しずつ変化をしてきており、また時代とともに種類も増えてきた。だが、「寄付」という言葉を聞くとまだ少しハードルが高い言葉に感じる。もっと身近になるために、もっと選択肢が増える事を期待したい。

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竹村 伊央 (一般社団法人unisteps共同代表)

1982年名古屋市生まれ。一般社団法人unisteps co-founder / ファッションスタイリスト。高校卒業後渡英し、エシカルファッションムーブメントを作り上げたブランドの1つ、 JUNKY STYLINGに勤務。同時にスタイリストとしてもエシカルを中心としたスタイリングも手がける。 2010年帰国後、2012年にエシカルファッションのPR活動をする団体:ETHICAL FASHION JAPAN(EFJ)を設立。 エシカルの啓発を含めたイベントや講演活動をしながら、2016年よりファッションレボリューションジャパンカントリーコディネーターを務める。【連載】多様で健康的なファッションの未来を考える

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