オルタナ総研統合報告書レビュー(3):日立製作所

日立製作所の統合報告書は、日立がめざす姿と社会に提供していく価値、これらを実現していくためのビジネスモデルや戦略、経営基盤を、多様なステークホルダーに説明し、中長期的な成長性を理解して頂くことを目的としています。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

同社が強調しているのは、「価値創造ストーリー」「Strategic Focus Area」の2点です。

「価値創造ストーリー」では、同社が注力する社会インフラのデジタルトランスフォーメーション(DX)を通じた協創・価値創造への取り組みを伝えることを重視しています。

同社はIT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフ、オートモティブシステム事業の6事業分野の価値創造ストーリーを開示しています。

例えばITセクターの価値創造ストーリーは「データとAI、IoTなどのデジタル技術を活用することで、お客さまや社会のDXを実現し、人々のQoLの向上、企業の価値向上に貢献」すると描かれています。

エネルギーセクターでは「エネルギーインフラの効率的な運用や電力の安定供給を支援することで、人々が安心・安全に電気を使える社会の構築をめざします」と示しています。

「Strategic Focus Area」(下図参照)とは、社会課題が複雑化・多様化する中、持続可能な社会の実現に向けて優先的に取り組むべき課題であり、戦略・施策を体系的に説明しています。

「Strategic Focus Area」は、「デジタル・AI活用による社会イノベーション」から「複合化・複雑化するリスクへの対応」まで14の課題に対し、認識・戦略、施策・KPI、貢献するSDGsを説明しています。

(参考)Hitachi Integrated Report 2021 p18-19 「持続可能な社会と事業の両立に向けて」 
(出所)Hitachi Integrated Report 2021 p18 「Strategic Focus Area」   

同社は今年、制作体制を大きく見直し、有価証券報告書、サステナビリティレポート、統合報告書の一体的な企画・制作チームである「情報開示ワーキンググループ」を立ち上げました。

統括責任者は、中畑英信執行役専務コーポレートコミュニケーション・オーディット責任者が務めました。

インベスター・リレーション本部、法務本部、サステナビリティ推進本部、ブランド・コミュニケーション本部の4つの部署が中心になって、同社の紹介媒体である有価証券報告書、統合報告書、サステナビリティレポートの企画・コンテンツ制作を行い、関連部門がサポートする体制で、連携して媒体制作に取り組みました。(参考)Hitachi Integrated Report 2021 p1「日立 統合報告書2021」編集方針」

同社は、「有価証券報告書、統合報告書、サステナビリティレポートの制作部門が横連携をすることで、経営戦略の一貫したメッセージ発信を行える体制となりました。また、より財務・非財務価値を統合した考えをメッセージに織り込むことができる制作プロセスとしました」と「情報開示ワーキンググループ」立ち上げの成果を強調しました。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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