「気候正義」を訴える若者に7政党が出した答えとは

若者による気候正義ムーブメント「フライデーズ・フォー・フューチャー(FFF)」と「あと4年」は10月17日、衆院選に臨む各政党と公開討論を行った。自民党、公明党、立憲民主党、日本共産党、日本維新の会、国民民主党、れいわ新撰組の7党が参加し、(1)環境政策の方針、(2)石炭火力、(3)原発、(4)若者の声の政策反映の4つについて議論した。(オルタナ編集部・長濱慎)

FFFメンバー4人と各政党の7人で討論

■石炭火力、原発の扱いで意見が大きく分かれる

公開討論のタイトルは「衆院選までもうすぐ!将来世代×各政党 気候変動対策討論会」で、各政党から下記の7人がオンラインで参加し、主催者側の若者からの質問にYesは「◯」、NOは「×」で答える形で討論を進めた。

・自民党 牧原秀樹・環境部会長

・公明党 新妻秀規・環境副部会長

・立憲民主党 山崎誠・環境エネルギー調査会事務局長

・日本共産党 田村智子・政策委員長

・日本維新の会 足立康史・幹事長代理

・国民民主党 濱口誠・企業・団体委員長

・れいわ新選組 くしぶち万里・東京都第22区総支部長

●質問1:「党の環境政策はパリ協定に整合し、将来世代や社会的に脆弱な人々に対して責任を果たす政策となっているか」

・自民党(◯)

日本はパリ協定でイニシアチブを取った。さらに菅義偉・前総理が2050年カーボンニュートラル宣言を行い、30年度の温室効果ガス削減目標を46%(13年度比)とし、50%の高みを目指している。

・公明党(◯)

パリ協定の1.5℃目標達成には、産業分野の転換が重要。失われる仕事もあり、そうした人々が他分野に転職するための支援をしっかりやる。


・立憲民主党(◯)

気候危機を乗り越えなければならないという危機感を持っている。30年度の温室効果ガス削減目標を55%(13年度比)としたが、それでも遅く、前倒しするスピード感が大切。

・日本共産党(◯)

30年度までに温室効果ガス削減目標を60%(10年度比)とした。5割を超える目標数値でなければ気温上昇を1.5℃以内に抑えられない。比較年は最も排出量が多かった13年度でなく「10年度比」とした。


・日本維新の会(◯)

決意表明だけでなく、具体的な政策が重要。気候変動対策の観点から原発は必要であり、東電福島第一原発事故の教訓を踏まえた「原発改革推進法案」を打ち出している。

・国民民主党(△)

エネルギービジョンを取りまとめているが、評価はまだまだなので「△」を選んだ。50年のカーボンニュートラルは国民生活や経済の安定・成長を犠牲にすることなく進める。


・れいわ新撰組(◯)

「脱原発・グリーンニューディール」によって、国の責任で廃炉を進め、脱炭素で新たな雇用を生み出す。また、気候変動適応法に「魂」を入れて国民の命を守れるものに。

●質問2:「2030年以前の石炭火力廃止を目指すか」

・自民党(×) 

石炭火力の比率を30年度の電源構成で19%としている。排出されるCO₂については、カーボンリサイクルをはじめとするイノベーションを日本の技術として輸出できるように。

・公明党(×)

石炭火力はなくさなければならないが、国民の命を守るためにも電力の安定供給は必要。高効率なタイプは残し、排出されるCO₂は炭素貯留技術で対応するのが現実的。


・立憲民主党(◯)

シミュレーションを行なったところ、省エネ、再エネ、LNG(液化天然ガス)火力を組み合わせれば石炭火力ゼロで問題ないが、バックアップとして取っておく。

・日本共産党(◯)

石炭火力ゼロはマスト。再エネを普及させ、40%の省エネ(10年度比)を実現すれば、石炭火力をなくしても問題はない。


・日本維新の会(◯)

石炭火力はゼロにするべきだが、そのためにはベースロード電源として原発が必要不可欠。石炭火力も原発もゼロというのは合理的・整合的ではない。

・国民民主党(△)

石炭火力は段階的に減らすべきだが、国民生活や経済への影響を加味して柔軟に判断すべき。脱炭素の技術開発が進めば、30年度でゼロというシナリオもあり得る。

・れいわ新撰組(◯)

今や世界の潮流は脱炭素でなく「脱化石」。温室効果ガス排出量が世界第5位の日本は、そのことを自覚して30年までに石炭火力ゼロを目指すべき。

●質問3:「原発を廃止する予定はあるか、廃止の場合は何年を計画しているか」

・自民党(△) 

老朽化した原発は将来的にフェードアウトさせていくが、30年時点の電源構成ではまだ20〜22%としている。次世代型のSMR(小型モジュール原子炉)の研究も進める。

・公明党(◯)

省エネ、再エネ、火力の脱炭素化、水素の導入を進め、できる限り早めに原発ゼロを目指す。その時期については、電力系統ルールの見直しや蓄電池の開発次第。


・立憲民主党(◯)

経済性においても社会的な合意においても原発を維持する合理性は失われており、一刻も早く脱却すべき。ただし廃炉のための社会的合意を得るには一定の時間がかかる。

・日本共産党(◯)

現状で電源構成6%の原発を「ベースロード電源」と位置付けるのは間違いで、原発への依存が再エネ普及の足かせになっている。できる限り早く廃止し30年はゼロに。


・日本維新の会(×)

党としては原発フェードアウトを打ち出しているが、気候変動対策・脱炭素を考えたら原発は必要。老朽化したものはSMR(小型モジュール原子炉)に置き換えるべき。

・国民民主党(△)

原発に依存しない社会を目指すべきだが、エネルギー安全保障の観点からまだ重要な選択肢と考えざるを得ない。脱原発には水素や潮力発電などの新たな技術開発が必要。


・れいわ新撰組(◯)

南海トラフ巨大地震や首都直下地震のリスクもある現在、すぐに廃止すべき。

欠席となった社民党からは、大椿ゆうこ・副党首が「原発ゼロ基本法案を成立させ、5年以内の廃炉を目指す」とメッセージを寄せた。

■政策への若者の意見、大半が「取り入れられていない」

質問に◯×で回答し、各党の意見を述べた

●質問4:「現在の政策決定の方法は、若者など一般市民の意見を取り入れているか」

・自民党(×) 

若者政策推進の超党派議員連盟もあるが、もっと若者の意見を反映する仕組みをつくるべき。

・公明党(×)

若者の意見を取り入れられていない。審議会の若者枠、若者担当大臣、選挙権年齢の引き下げが必要。


・立憲民主党(×)

政策決定にかかわる審議会の人選は与党の意を汲んでいる。審議会のメンバー選びの段階から、バイアスがかかっていない市民が参加する仕組みをつくるべき。

・日本共産党(×)

パブリックコメントに寄せられた声に応える仕組みがない。科学者や専門家、既得権益に関係のないメンバーの意見を取り入れることが必要。


・日本維新の会(◯)

課題はあるが、本日このようなイベントに各政党が集まった。その努力に敬意を評して「◯」とした。政策に声を反映させる最大の手段は投票なので、総選挙に行ってほしい。

・国民民主党(△)

まだ広く意見を取り入れる必要がある。そのためにも「カーボンニュートラル国民会議」の設立や、学校教育に環境問題を取り入れるべき。


・れいわ新撰組(×)

近年はさまざまなステークホルダーが参加するようになっているが、気候変動に最も弱い立場にある高齢者や低所得者の意見は取り入れられていない。

この最後の質問に対しては「意見を反映させやすくするために、若者を代表する組織をつくるべき」、「いや、我々の方から声をあげられない人々の声を拾っていくべき」など、議論が続いた。

約2時間の討論会は、全編をYouTubeのアーカイブで視聴できる。

S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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