国内初、生乳・牛肉・鶏卵の3つで有機認証を取得

北海道・広尾町にある鈴木牧場は2021年8月、生乳・牛肉・鶏卵で有機認証を取得した。単独の牧場が一度に3つの認証を取得するのは国内初だ。牛の健康というアニマルウェルフェアのために始めた取り組みが、化学肥料・農薬ゼロにつながり、オーガニック牛乳や鶏卵など付加価値の高い商品を生み出した。将来は、野菜の栽培も含めたサステナブルな酪農・農業を目指すという。(オルタナ編集部・長濱慎)

66ヘクタールに広がる鈴木牧場、牧場ホームページより

■牧場内の自然ですべてをまかなう循環型酪農を実現

循環型酪農のきっかけは、2008年と10年に起きたサルモネラ菌の家畜伝染病だった。

「牛を健康的に飼うには、治療じゃなくて予防だよ」。代表の鈴木敏文さんは妻で獣医師の鈴木なつきさんのアドバイスを受け、牛に与える飼料を見直した。

こうして化学肥料や農薬の使用をやめ、牛の糞尿を発酵させて作った堆肥をまき、その土壌で育った牧草を牛に食べさせる循環型酪農が始まった。

有機認証を受けた生乳で作ったオーガニック牛乳は、それを飲むために鈴木牧場まで訪ねてきたファンがいるという。現在は22年秋の全国販売を目指して準備を進めており、将来は学校給食に提供したいと、鈴木さんは夢を語る。

同じく認証を受けた牛肉は、牧草や野草だけで育てたグラスフェッドビーフで、牧場の通販サイトでは品切れが続く人気商品だ。牛肉本来の味と甘みがして、タレをつけなくても美味しく食べられると評判も良い。

鶏卵は有精卵で、平飼い飼育の鶏が産んだものだ。鶏の飼料も、すべて牧場内で作ったトウモロコシ発酵飼料と牧草でまかなっている。

さらに牛の健康を考え、地元・広尾町の東側に広がる太平洋の海水を煮詰めて作った塩を与えている。その熱源には牧場内の林から出た間伐材を活用しており、排熱を活用した野菜の栽培も計画しているという。

S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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