再生可能エネルギー79%を達成する国、オーストリア。国土の約半分が森林かつ急峻な地形にあるこの国は、日本の農山村地域と共通点が多く、オーストリアの再エネ技術を市町村に導入する事例が増えています。オーストリアに早くから着目し、研究を続けてきた東北芸術工科大学の三浦教授にお話を伺いました。(旭硝子財団)

森林資源の豊富な地方こそ、地域熱供給を

東北芸術工科大学の三浦秀一教授。自宅の薪棚の前で

2050年カーボンニュートラルを世界に宣言した日本。東北芸術工科大学デザイン工学部建築・環境デザイン学科の三浦秀一教授は、「日本で再生可能エネルギーの利用を拡大させるための鍵は、間違いなく森林資源にある」と語ります。

建築学の立場から地球温暖化問題に取り組んできた教授は、森林資源のもつエネルギーを活用した住まい・地域づくりをテーマに研究を進めてきました。

木は光合成によってCO2を固定しながら成長するため、燃やしてCO2が放出されても、炭素が循環していることになり、カーボンニュートラル(炭素中立)が保たれます。欧州ではこの考え方に則り、森林資源のエネルギーへの利用が進んできました。

教授は欧州の中でも、オーストリアの村々に着目。村々では、木質チップや薪などを燃料とするボイラー(バイオマスボイラー)が、複数軒または地域中の暖房と給湯を一手に担う「木質バイオマス地域熱供給」がさかんに行われていたのです。

当時日本では、人口の分散する地方での地域熱供給は難しいと言われていました。では、山の地形や人口が近いオーストリアでは普及しているのはなぜなのでしょうか。

地域熱供給は「公共施設」を拠点に

最上町の若者定住環境モデルタウン。中央が賃貸の集合住宅、向かって左が戸建てのモデル住宅。バイオマスボイラーの熱を給湯と暖房に役立てる。道路の下にも配管して雪が溶ける仕組みになっている

オーストリアと日本の農山村を比べた時、異なっていたのは人口密度ではなく自治体の規模感でした。日本では人口1万人以上の市町村が約7割を占める一方、オーストリアは数百〜数千人規模の自治体が大半。

関わる住民が木材伐採や供給の当事者となることが多いこと、法律や条例が地域の実情に合っていることがわかりました。また、日本の地方は車移動が基本で、より施設が分散している傾向にありました。

「ですが、日本でも丁寧に探していけば、役場や学校、公民館など、近距離に主要な公共施設が集まっている場所は結構あります。これらを中心にすれば、充分に地域熱供給は可能だと考えています」と三浦教授。

「森林資源を利用して熱(温水)を作り、地域で暖房や給湯に共同利用する仕組みは、日本にこそ向いているとも思います。日本人は、風呂を沸かすために多大なエネルギーを用いていて、全国各地にある日帰り温泉施設に至っては、年間1000万円のコストをかけ、源泉を加熱しているところがたくさんあります。地域として森林資源を燃料として熱を作り、温泉施設でも周辺住宅でも活用できたら? インパクトのある改革になると思いませんか」

この研究はその後、三浦教授が関わった山形県最上町のプロジェクトに大いに生かされることになりました。地域熱供給で暖房と温水をまかなう戸建て住宅、集合住宅を建設し、モデルタウンを作るという計画で、2016年に完成し現在も稼働を続けています。

再生可能エネルギーの可能性は、日本の農山村地域にこそある――三浦教授の確信は、近い将来きっと、現実のものとなるに違いありません。

三浦教授にお話をうかがった旭硝子財団の発行する「af Magazine」の全文は、下記からご覧いただけます。

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