岐阜大生が大学の環境活動を牽引、内部監査にも協力

東京商工会議所は11月26日、「eco検定アワード2021」表彰式を開催した。同アワードは積極的な環境活動を行うeco検定合格者(エコピープル)の取り組みを広く周知することで、具体的なアクションの参考にしてもらうことを目的としている。エコユニット部門(法人)大賞は学生主体の環境活動を推進する岐阜大学、エコピープル部門(個人)大賞は中小企業診断士の林啓史さんが受賞した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

eco検定は、環境問題やSDGs(持続可能な開発目標)を幅広く体系的に学ぶ検定試験で、これまでのべ50万人が受験し、30万人のエコピープルが誕生している。

学生がISO14001の内部環境監査員に

授業の一環で岐阜市メガソーラー発電施設を見学する岐阜大生
授業の一環で岐阜市メガソーラー発電施設を見学する岐阜大生

エコユニット部門で大賞を受賞した岐阜大学は、「グリーンキャンパス構想」のもと、学生と大学が協力し合いながら環境への取り組みを進めている。

環境マネジメントシステムのISO14001の内部監査では、研修を受けた有志の学生が内部環境監査員として活躍。同大学が掲げる環境目標の達成に向けて、取り組みを評価し、PDCAサイクルをまわしていく。

学生監査員からは、「エネルギー使用量が多いのではないか」「生物多様性を保全するために外来生物の駆除が必要」「避難経路が学生には分かりにくい」といった率直な意見が寄せられる。

岐阜大学管理部施設課環境安全係長の高瀬恵子さんは、「どうしても現実的なことを考えてしまう教職員の目線とは違って、真っ新な学生の目線で、忌憚ない意見をもらえることは大学運営としても助かる。より高みを目指して、目標達成に向けて取り組みを進めていくことができる」と、その意義を説明する。

岐阜大学が法人統合した名古屋大学と共同で発行する環境報告書の作成でも、学生が主体的に参加。両大学から総勢40人が編集者として制作に携わった。

同大学は、今後も地域の課題を解決し、環境社会を担う人材育成に力を入れていく。

銭湯の経営支援とエコを両立

エコピープル部門で大賞を受賞した林さんは、中小企業診断士として銭湯のサステナブルな施策を支援している。

東京都生活文化局の調査によると、都内の銭湯の軒数は、2008年に879軒だったのが、2020年度には453軒と半数にまで減少したという。そうしたなか、林さんは、経営改善の一環として、省エネ・創エネに取り組み、環境負荷を低減していくことを目指す。

例えば、薪をエネルギーにしている銭湯では、ススが大量に出るため、近隣住民とのトラブルになることがあるという。そうした課題を解決するために、太陽光発電設備の設置やスマートメーターの導入などを提案する。

創業支援も行う林さんは、地域密着型の創業セミナーのなかでSDGsを取り入れている。「事業は社会にどのように貢献できるのか。パーパス(存在意義)について、深く考える機会を提供することで、新たなビジネスチャンスに向けてスタートを切ってもらいたい」と語った。

このほか、「eco検定アワード2021」の受賞者は次の通り。

「eco検定アワード2021〕表彰式で
「eco検定アワード2021〕表彰式で

<エコユニット部門> ※同賞内は五十音順、( )内は活動エリア

【大 賞】
●国立大学法人東海国立大学機構岐阜大学(岐阜県岐阜市/教育機関)

【優秀賞】
●イオンモール(千葉県千葉市/大規模地域開発・ショッピングモール開発運営)
「ハートフル・サステナブル」を掲げ、SDGsに貢献する取り組みを推進。その一環として、国内の商業施設として初めてのFSCプロジェクト認証(全体認証)を取得した。施設での再生可能エネルギーの導入も進めている。

●ブランシェス(大阪府吹田市/ベビー、子ども、婦人衣料の企画製造販売)
2010年から「オリジナルハンドタオル」の売り上げの10%をサンゴ礁再生活動に寄付。社内ボランティアによる植樹と合わせて累計268株のサンゴを沖縄の海に植えた。素材もオーガニックコットン100%、パッケージもプラから紙にリニューアルした。

【奨励賞】
●アクリーグ(栃木県小山市/行政事務支援コンサル)
2008年から足尾銅山での植林活動を行うほか、J-クレジットを活用した低炭素投資を促進。同社が手掛ける「栃木県道路照明灯LED化ESCO事業による地域温暖化対策プロジェクト」が2020年にJ-クレジット制度に登録された。

●植田油脂(大阪府大東市/廃食用油のリサイクル)
スーパーなどから出る天ぷら油やラードを回収して、業務用複合石けん「グリーンサイクル」に再生。地域の学校給食の食器洗浄などに使われている。従業員は定期的に清掃活動を行うなど、地域密着型の取り組みを進める。

<エコピープル部門>
【大 賞】
●林啓史さん(東京都、静岡県/林中小企業診断士事務所)

【優秀賞】
●小林由紀子さん(岐阜県/特定非営利活動法人e-plus生涯学習研究所)
コロナ禍に対応しながら、継続して環境教育を実施。SDGsや気候変動、海洋プラスチックごみ問題をテーマに、子どもたちの関心を高めるために、ゲームや実験の要素を取り入れながら、分かりやすい授業を実施している。

【奨励賞】
●佐藤秀樹さん(バングラデシュ、千葉県松戸市、流山市/江戸川大学社会学部専任講師)
江戸川大学で、行政、企業、教育機関やNGO/NPOの協働による環境教育の取り組みなどについて講義をする傍ら、SDGsの普及啓発やNGOの活動にも力を入れる。バングラデシュのNGOと連携して、里山農業保全活動も行う。

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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キーワード: #SDGs#脱炭素

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