難聴児療育のパブコメで厚労省が「手話」受け付け

厚生労働省は12月24日、「難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針(案)」のパブリックコメント(意見の募集)で、「手話」を撮影した動画でも受け付けることを表明した。厚労省は12月10日から同案件のパブコメを開始したが、当初は意見提出フォームなどを通じた「日本語」のみでの受け付けだった。聴覚に障がいがある当事者団体らの要望を受けて実現した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

左から藤木和子IGB理事、伊藤芳浩IGB理事長、自見はなこ参議院議員、平田菜摘厚生労働省社会・援護局 障害保健福祉部企画課課長補佐
左から藤木和子IGB理事、伊藤芳浩IGB理事長、自見はなこ参議院議員、平田菜摘厚生労働省社会・援護局 障害保健福祉部企画課課長補佐

「難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針(案)」は、すべての新生児に聴覚検査を実施するなど、難聴の早期発見と早期療育のための方針をまとめたものだ。厚労省は、12月10日から1月9日までパブリックコメントを募集している。

パブコメ開始当初は、電子政府の総合窓口の「意見提出フォーム」、郵送、ファクスの受け付けで、日本語でしか提出できなかった。手話は、音声言語とは異なる文法体系を持った独自の言語で、手話を第一言語にしている人は、日本語を読めなかったり、書けなかったりすることも多い。

パブリックコメント募集にあたり、ろう者が使用する言語(手話)では意見を提出できないことから、コミュニケーションバリアの解消に取り組むNPO法人インフォメーションギャップバスター(IGB、横浜市)は、次の2点を求めて署名活動を実施した。

1.パブリックコメントで意見募集する内容を手話で案内してください
2.パブリックコメントは日本語だけでなく手話でも提出できるようにしてください

1に関しては、ろう者の有志が独自に手話翻訳した動画をIGBのユーチューブで公開している。

12月23日には、パブコメの所管部署である厚労省社会・援護局障害保健福祉部企画課に741筆の署名を提出した。難聴対策議員連盟事務局長を務める自見はなこ参議院議員も立ち合った。

その結果、厚労省は12月24日、本案件の意見募集要項のなかで、「手話を撮影、録画し意見提出される場合には、動画を保存したDVDを郵送してください」との文言を追加し、手話動画を受け付けることを正式に表明した。

厚労省社会・援護局障害保健福祉部企画課の平田菜摘さんは「当事者のこれまでの経験や意見を踏まえて、方針を策定する必要があると考え、手話動画を受け付ける体制を整えた」と話す。受け付けた手話動画は、日本語に翻訳され、パブリックコメントとして反映される。

本案件以外の手話動画の受け付けに関しては未定だ。

yoshida

吉田 広子(オルタナ副編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。執筆記事一覧

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キーワード: #ビジネスと人権

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