日銀が2兆円の「気候変動対応オペ」

日銀は2021年12月24日から、気候変動対策に関する投資や融資の目標や実績、リスク管理などの開示を行っている金融機関を対象に、金利0%で貸し付ける新たな資金供給制度を開始した。貸付予定総額は2兆円に上る。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

日本銀行は、気候変動問題を将来にわたって社会・経済に広範な影響を及ぼしうるグローバルな課題と捉えている。

中央銀行の立場から、金融機関との対話や国際的な議論への参画を進めてきたほか、行内組織である「気候連携ハブ」の立ち上げなど気候変動に関する体制の強化を図ってきた。

同行は昨年7月、物価の安定と金融システムの安定という日本銀行の使命に沿って気候変動に関する取り組みを進めるため、「金融政策」「金融システム」「調査研究」「国際金融」「業務運営、情報発信」の5点について包括的な取り組み方針を決定した。

日本銀行は、中央銀行の立場から民間における気候変動への対応支援は、長い目でみたマクロ経済の安定に資すると考えている。

「金融政策」面では、市場中立性に配慮し、中央銀行がミクロ的な資源配分に具体的に関与することは可能な限り避けることが適当だと認識している。

それゆえ同行は、気候変動対策に関する投資や融資の目標や実績、リスク管理などの開示を行っている金融機関を対象に、金利0%で貸し付ける新たな資金供給制度を2021年内に実施することを決めた。

その後昨年9月の日本銀行金融政策決定会合は、新たな資金供給制度を12月下旬に開始すると決め、2021年12月23日に貸付対象金融機関に通知された。

貸付日2021年12月24日、返済期日2023年1月30日、貸付予定総額20,483億円、貸付限度額2兆4,761億円が、その内容である。

「金融システム」は、コーポレートガバナンス・コードの改訂を踏まえた気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)等に基づく開示の質と量の充実を、金融機関に対して促していく。

「国際金融」協力については、市場育成の観点から各国中央銀行との協力を通じて、グリーンボンド等への投資拡充に取り組む。

「情報発信」は、TCFDによる推奨内容を踏まえた開示を行うほか、気候変動に関する日本銀行の取り組み全般の対外説明の充実を、日本銀行ホームページ専用のサイト「気候変動」を活用して行う。

日本銀行は、今後も気候変動に関する情勢変化を適切に把握し、国際的な議論への積極的な参画も含め、内外関係者と密接に情報交換を行い、各種の施策について不断に検討を重ね対応していく方針だ。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #ESG#SDGs#脱炭素

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