プラごみ「一括回収」へ 4月から新法、一部自治体動く

プラスチックごみの削減や資源循環を目指した「プラスチック新法」の施行令および施行期日を定めた政令が14日、閣議決定され、全容が明らかになった。今年4月から施行し、家庭から出るプラごみの一括回収が可能になる。ただ、これまでプラごみを焼却し、熱利用していた自治体も多く、自治体の多くはまだ様子見の段階だ。東京都北区、愛知県豊明市などは来年度から一括回収を開始する。(オルタナ編集委員・栗岡理子)

自治体の分別収集に出されたプラごみ。現在は、容器包装プラのみを集める自治体が大半だが、今後は変わるかもしれない
自治体の分別収集に出されたプラごみ。現在は、容器包装プラのみを集める自治体が大半だが、今後は変わるかもしれない

プラ新法で重視される3つの措置事項

プラ新法の目的は、いうまでもなく2019年に策定された「プラスチック資源循環戦略」の目標(マイルストーン)の達成だ。そのために重視されている措置は、(1)「環境配慮設計」(2)「ワンウェイプラの使用の合理化」(3)「リサイクル」だ。

(1) 「環境配慮設計」では、分解の容易化や素材の単一化などリサイクルしやすい設計への変更を促す。国が定めた設計指針に適合した環境配慮製品は、国などが率先して調達することになる。

(2) 「ワンウェイプラの使用の合理化」では、使い捨てプラ削減を進める。この対象に選ばれたのはプラスチック製のフォーク、スプーン、テーブルナイフ、マドラー、ストロー、ヘアブラシ、クシ、カミソリ、シャワー用のキャップ、歯ブラシ、ハンガー、衣類用カバーの12品目だ。

これらを多量に提供する事業者は、削減目標を定め、それを達成するために有効な取組を選択する。例示されている取組は、有料化や辞退者へのポイント還元、設計変更による軽量化や再生可能資源等への素材変更などだ。

(3) 「リサイクル」は自治体の分別収集や、事業者の自主回収、排出事業者の再資源化などだ。中でも注目されているのが、自治体による容器包装プラ(ペットボトルを除く)と容器包装以外のプラ(歯ブラシやおもちゃ、ハンガーなどの製品プラ)の「一括回収」である。

来年度から一括回収に取り組む自治体も

「一括回収」の最大メリットは、住民が分別しやすくなることだ。現在、約7割の市区町村が、ペットボトル以外の容器包装プラを分別収集しているが、「容器包装プラとそれ以外のプラごみの違いがわかりにくい」など分別に対する住民の不満は大きい。

東京都港区や埼玉県の志木地区衛生組合(新座市・志木市・富士見市)など約30自治体・団体は、すでに製品プラも一緒に集めている。これまでは、集めたプラごみを自前の施設で容器包装プラと製品プラとに選別し、容器包装プラは容器包装リサイクル法のルートで、製品プラは独自のルートでリサイクルしていた。

法律が施行されれば、それら一括回収したプラごみを分けることなく容器包装リサイクル法ルートに一緒に乗せてリサイクルできるようになる。費用負担についての自治体の不安は大きいが、これによりリサイクル率の向上が見込まれる。

プラ新法の施行に合わせて自治体が一括回収に踏み切る動きも、少ないながらも出てきた。愛知県豊明市は今年10月から一括回収を行う。同市は来年度末までの4年間でごみを20%減らすという目標達成のため、一括回収を始める(豊明市環境課)。

東京都北区も今年10月から一部地域で開始、来年4月には全域へ広げる。北区はこれまで容器包装プラの分別収集をしていなかったが、地球環境への配慮から新法施行のタイミングに合わせて一括回収を決断した(北区生活環境部)。

昨年一括回収のモデル事業に取り組んだ京都市は目下、モデル事業の結果を分析中とのこと。今後、費用負担や回収対象物などについて情報収集に努め、実施の可否も含め、検討していく(京都市資源循環推進課)。

福岡市は2022年度内にモデル事業として一部地域で開始するが、「市内全域に広げるかはその後、検討に入る」(福岡市循環型社会推進部)という。

環境にやさしい暮らしを考える

栗岡 理子(編集委員)

1980年代からごみ問題に関心をもち、活動しています。子育て一段落後、持続可能な暮らしを研究するため、大学院修士課程に進学。2018年3月博士課程修了(経済学)。専門は環境経済学です。執筆記事一覧

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