プラスチック汚染はいまや海洋だけの問題ではない。大気中や人間の体内からも微細なプラスチック(マイクロプラスチック)が見つかっている。大気汚染の専門家である早稲田大学創造理工学部の大河内博教授が、富士山頂の大気からマイクロプラスチックを採取・分析し、その結果をまとめた。大気中のマイクロプラスチックを吸入することによる健康リスクも懸念されるという。(オルタナ編集委員・栗岡理子)
富士山頂のマイクロプラスチックはどこから飛来?
富士山頂は自動車や工場の煤塵など、人間活動による影響を受けない自由対流圏だ。風が強く、空気は澄んでいるはず。その富士山頂でもマイクロプラスチックが見つかるという。マイクロプラスチックが自由対流圏で見つかることは、何を意味しているのだろうか。早大の大河内教授に聞いた。
「自由対流圏は強い風が吹いていますから、ここに汚染物質があれば地球全体を早いスピードで循環し、地球を汚染します。ですから、地球規模でプラスチックによる大気汚染が起きている可能性を示唆しています」(大河内教授)
プラスチックが地球の周りを駆け巡っているようだ。では、富士山頂のマイクロプラスチックは一体どこから飛んできたのだろう。
「2019年に富士山頂で観測した時には、1立方メートルの大気中にマイクロプラスチックが約5個見つかりました。これは東京・新宿区の早稲田大学の屋上と同程度で、汚染物質の少ない自由対流圏としてはかなり多い。台風6号の通過後に採取した大気を分析したため、台風の影響を受けたようです。太平洋の海面に浮かぶマイクロプラスチックを巻き上げたのではないかと考えています。ポリプロピレン粒子が最も多く、PET(ポリエチレンテレフタレート)や生分解性プラスチックの破片も見つかりました」(大河内教授)
2020年は新型コロナのせいで観測できなかったが、2021年には1立方メートル当たり0.06個から0.19個のマイクロプラスチックが富士山頂で見つかったそうだ。
「2021年で少なかったのは日本上空の自由対流圏の大気が流入したときで、太平洋上で観測された濃度と同程度でした。自由対流圏大気でも中国大陸の上空や、東南アジア諸国の地上付近の空気が運ばれてくると濃度が上がりましたが、2019年ほどではありませんでした」(大河内教授)