今問われる「パーパス経営と社会的インパクト」とは

社会的インパクト・マネジメントを推進する、国内のプラットフォーム組織である社会的インパクト・マネジメント・イニシアチブ(SIMI)は1月21日、24日、25日の3日間、「インパクト・エコノミーへの転換点―社会的インパクト時代の到来―」と題したイベント、「Social Impact Day 2021」をオンラインで開催する。初日の21日に行われたセミナー、「パーパス経営と社会的インパクト」について報告する。(オルタナ副編集長=山口勉)

ブルーノ・ロッシ氏。「Economics of Mutuality」プラットフォームの創設者

これからは互恵経済の時代

「企業の目的は何かを考えると、もはや利益の最大化ではない。世界の課題に対して解決策を与えることだ。CSRやESGも既に非効率であり、早晩終わる」

ブルーノ・ロッシ(Bruno Roche)氏はこう言い切る。同氏は、パーパス経営でグローバルな潮流を作った「Economics of Mutuality」プラットフォームの創設者だ。

ロッシ氏は、「これからは、互恵経済(Economy of Mutuality)の時代だ。もはや一部の人に資するシステムは認められない。上位1%の富裕層が世界の40%の富を独占している状況はもう受け入れられない」と主張する。

グローバルでは、パーパスを問うのは「なぜ」ではなく「どうやって」の時代になった。なぜやらなくてはいけないのか、ではなく、野心的なパーパスを掲げ、どうやってそれを実現するかを考える段階に来ている。

例えば、ある医薬品メーカーは、インスリンは糖尿病を撲滅するためにある、と位置づけた。インスリンを売ることだけを目的としなかった。その結果、運動の推奨や、生活習慣の改善など、インスリンの販売以外の新たなビジネスを創出し、利益を最大化できた。

パーパス経営は企業の覚悟

「2030年までにSDGsを達成しても、自社が社会から選ばれなければ存続できない」

こう語るのは富士通の梶原ゆみ子、CSO・サステナビリティ推進本部長だ。

梶原氏は「これまでの財務諸表は短期思考だった。今後そのままでは価値ある会社と見なされない。あらゆるステークホルダーが富士通を選ぼうと思わなければ生き残れない。そのためには長期的な視点の経営が必要だ」と力を込める。

「企業経営の中心に置くべきものは何か」

セミナー後半の対談で、モデレーターを務めたインパクト・マネジメント・イニシアチブの今田克司代表理事はこう質問した。

これに対し、ロッシ氏は近江商人の家訓である「三方よし」という言葉を挙げた。「社会的な質の向上が求められる互恵の経済にも通じる」と語った。

「価値を共有するところはバリュークリエーションモデルだ。これからは会計システム自体を変える必要もある。非財務情報の貨幣価値換算を進めることだ」(ロッシ氏)

「株主の反応はどうか」と聞く今田氏に応え、梶原氏は「パーパス経営を打ち出したことで、富士通が変わるんだ、というメッセージを統一的に出せるようになった。一体感持って説明できるので、わかりやすくなったと言われる」と、その効果を強調した。

最後にロッシ氏は、「まず教育から始めないといけない。日本でもインパクト・マネジメントのスクールを立ち上げたい」、と日本企業へメッセージを送った。

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山口 勉(オルタナ副編集長)

大手IT企業や制作会社で販促・ウェブマーケティングに携わった後独立。オルタナライターを経て2021年10月から現職。2008年から3年間自転車活用を推進するNPO法人グリーンペダル(現在は解散)で事務局長/理事を務める。米国留学中に写真を学びフォトグラファーとしても活動する。 執筆記事一覧

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キーワード: #ESG経営#パーパス

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