ラリー・フィンクの年頭書簡、「パーパス」強調

世界最大の資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEOは、毎年年初に、投資先企業のCEOに「年頭書簡」を送っている。いわゆる「フィンク・レター」だ。2022年の年頭書簡では、「パーパスをステークホルダーとの関係の基盤に位置付けることが、長期的な成功の鍵だ」と強調した。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

ブラックロックのラリー・フィンクCEO

年頭書簡の要旨は次の通り。

【前文】

「ステークホルダー資本主義」は、貴社の繁栄の基盤となる従業員、顧客、取引先、そして地域社会が相互に利益をもたらす関係を築くことによって実現することを意味する。

資本主義の基盤にあるのは、絶え間なく新しいものを創り、変革していくプロセスであり、企業は、自身を取り巻く環境の変化や新たな競争相手に取って代わられるリスクに対応して常に進化し続けなければならない。

企業経営者が一貫した主張、明確なパーパス、理路整然とした戦略、長期的な視点を持つことが今ほど求められている時はない。

パーパスをステークホルダーとの関係の基盤と位置付けることが、長期的な成功の鍵である。

【資本主義とサステナビリティ】

私が気候リスクは投資リスクであると指摘したのは2年前のことだ。

このわずか2年の間に、地殻変動的な資本の再配分が進んでいる。サステナブル投資は4兆米ドルに達している。脱炭素化に向けた行動や意欲的な目標も広がりを見せている。

ネットゼロ社会への移行により、すべての企業、すべての業界が変貌することになる。問われているのは、貴社がそれを先導するのか、あるいは後塵を拝するのか、ということだ。

【ESG関連の議決権行使の選択肢提供を通じた、顧客のエンパワーメント

弊社は将来的に、個人投資家を含むあらゆる投資家が、要望に従って議決権行使のプロセスに参加する選択肢を持つことができるようにすることを目指している。

貴殿が、自社のパーパスに真摯に向き合い続け、長期的な視点に重きを置きつつ、一方で我々を取り巻く新しい世界に適応していくことができれば、株主のために持続的なリターンを達成し、あらゆるステークホルダーに資本主義の力をもたらすことになるだろう。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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