新しいエコビジネスに知恵を貸そう

■小林光のエコめがね(14)■

大丸有地区(千代田区の大手町、丸の内、有楽町界隈)に、働く人々の環境寄合所みたいなものがある。場所は、皇居のお濠端の大手門タワー・ENEOSビル1階にある3×3Lab Future(さんさんラボ フューチャー)。ここを拠点に様々な活動を行っているのがエコッツェリア協会である。

この界隈に事務所を置く企業が会員になっているほか、個人の会員も多数いる。3×3Lab Futureは会社でも自宅でもない第三の居場所、サード・プレイスで、異業種、異担当の人が巡り会って新しい関係性を生み、そして新たなビジネス創出や既存事業の刷新につながることが期待されている。多様性が価値を生むことを狙った、都市ならではの仕掛けである。

この場所で、論者は、2011年以来、CSV経営サロンという勉強会を開き、その座長を務めている。いわゆるCSVビジネス、すなわち、公益実現に役立ちつつ企業利益も確保することを目指すビジネスに関し、これまではその成功例について、当事者から苦労話や成功の秘訣を語っていただき、参加者でディスカッションしてきた。

しかし、2021年度に関しては方針を少し変えた。まだ存在しない、生まれかけのビジネスを取り上げ、直面する問題点をはじめ、その生みの苦労を聞くこととした。

2021年度第一回CSV経営サロンの様子

初回は、エンジン命の自動車会社、本田技研工業 資源循環部長の橋本氏をゲストとして実施。全車電動化に舵を切った結果、将来大量に発生する車載用高性能蓄電池のリユース・リサイクルをビジネス化しようとする取り組みを聞いて、参加者で悩みを分かち合い、知恵を出し合った。

2回目は1月21日。複数の食品会社の若手社員が企業の壁を越えて集まったグループ「FOOD UP ISLAND」の発案者である金丸氏から、持続可能な食品(サステナブル・フード)をどうやって消費者に支持してもらえる商品にするか、という論点でその問題点や試行錯誤を聞き、意見交換を行った。

3回目は、海洋生態系によって貯留される炭素であるブルーカーボンをテーマに、2月21日に開催を予定している。

このCSV経営サロンは、元々はエコッツェリア協会の会員限定であったものの、現在では各回のテーマに沿った関係する業界の団体にも参加のお声掛けを行っている。テーマに合致する業界の方は、ちょっと覗いてみませんか。

hikaru

小林 光(東大先端科学技術研究センター研究顧問)

1949年、東京生まれ。73年、慶應義塾大学経済学部を卒業し、環境庁入庁。環境管理局長、地球環境局長、事務次官を歴任し、2011年退官。以降、慶應SFCや東大駒場、米国ノースセントラル・カレッジなどで教鞭を執る。社会人として、東大都市工学科修了、工学博士。上場企業の社外取締役やエコ賃貸施主として経営にも携わる

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