オルタナ総研統合報告書レビュー(10):MS&ADインシュアランスグループホールディングス

MS&AD統合レポート2021

MS&ADインシュアランスグループホールディングス「MS&AD統合レポート2021」では、「コーポレートガバナンス態勢と取り組み」の文脈で「サクセッションプラン」が開示されています。グループの持続的成長と企業価値向上をめざすため、グループCEOの選解任及び後継者の育成を経営の重要課題と位置付けています。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

同グループは2019年5月20日、「グループCEOのサクセッションプラン策定に関するお知らせ」をプレスリリースしました。以来統合レポートで開示しています。

背景としては2018年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂において、CEOのサクセッションプランおよび選解任基準等に関する取り組みが要請されたことがあります。

CEOの選任基準は、「グループの経営理念(ミッション)・経営ビジョン・行動指針(バリュー)を体現し、社会との共通価値の創造(CSV:Creating Shared Value)の実現に高い価値観を有している」「将来ビジョンの構想力、構築力を備えている」「公平・公正さを備えている」「人財育成力を有している」「リーダーシップが発揮できる」「グローバルな対応力を有している」「グループベストを行動の基本としている」の7項目です。

CEOの選任プロセスは、①CEOが社内外の人財を優先順位を付けて人事委員会に推薦する②人事委員会が審査する(社外取締役は別の候補者を推薦することができる)③人事委員会が取締役会に助言を行い、取締役会の決議により決定するというものです。

CEO候補者の育成計画は、「CEOは多くの候補者を育成することを自身の重要な役割と位置付け、候補者(当社グループ内出身者)には必要に応じて以下の経験を積ませることとする。
 •複数部門(管理・業務・国際・営業・損害サービス・システム等)
•国内事業会社、海外子会社の経営」
と定められています。

また同レポートには、取締役会の実効性確保に必要な9つのスキル(知識、経験、能力)が明確化されています。

取締役・監査役・執行役員毎に「企業経営」、「人事・人財育成」、「法務・コンプライアンス」、「リスク管理」、「財務・会計」「保険事業」、「国際性」「IT・デジタル」、「サステナビリティ」のスキルがマッピングされています。

2021年6月改定されたコーポレートガバナンス・コードの「経営戦略に照らして取締役会が備えるべきスキル(知識・経験・能力)と、各取締役のスキルとの対応関係の公表」に合致しますが、スキルを認定された根拠として、具体的キャリアも開示されたらいかがでしょうか。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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