各地で反戦デモ:「声上げるほど悲しさ増した」

ロシアのウクライナへの軍事侵攻に反対する抗議デモが2月26日、JR渋谷駅前で行われた。日本に住むウクライナ人らが呼びかけたこの集会には約2000人が集まり、ウクライナ国歌を歌うなどして「戦争反対」を訴えた。ウクライナ人の友人を持つ今井櫻子さんは人生で初めてデモに参加した。「無力さを痛感しながら声を上げた。あとどれだけ声を上げ続ければいいのかも分からない」と悲痛な叫びを上げた。(オルタナS編集長=池田 真隆)

JR渋谷駅ハチ公前広場で行われた抗議デモ

JR渋谷駅のハチ公前広場で26日午後1時半ごろから抗議デモは始まった。デモのリーダーはウクライナ東部出身の女性で、友人や親戚が亡くなり、幼い頃に過ごしたふるさとも失ったという。

会社員の今井櫻子さんはウクライナ人の友人を持つ。大学時代にカナダのトロントに留学し、その際に同じクラスで仲良くなったという。その友人はバンクーバーに住んでいるが、家族や友人はキエフにいる。

24日にロシアの侵攻が始まってからは、SNSで友人とは連絡を取った。肉声でウクライナの危機的状況などを聞き、「居てもたってもいられなかった」とデモに参加した理由を話す。

デモに参加した今井さん(右)

友人とともに人生で初めてデモに参加した。 「戦争をやめろ」「人を殺さないで」というシュプレヒコールが鳴り響く空間が異常で、「最初は戸惑ってオロオロした」という。

雰囲気に圧倒されて声を出せなかった状況でも、精一杯手を叩いて思いをぶつけた。デモの参加者の一人になったことで、「いま、私が生きているこの瞬間の出来事だと改めて突き付けられた」。

参加者はウクライナ国家を歌い、ウクライナの国旗を身体に巻き付けた男性が「戦争反対」を叫ぶ。今井さんらも次第に声を出せるようになったが、「この声が日本政府や国際社会に届くのか。何かが変わるという実感は正直湧かなかった」という。

それでも沈黙することは絶対にいけないと思い、声を上げ続けた。だが、声を出せば出すほど、「無力さや苦しさ、悲しさが募った」と心中を明かした。

開始して約1時間で参加者は2000人を超え、これ以上増えると、道路に人が溢れてしまうという理由でデモは中断された。

今井さんは、「あとどれくらい声を上げればいいのか分からない。けれど、今はできることをやっていくしかない」と気丈にふるまう。

ロイター通信によると、ウクライナ保健省は26日時点で、ロシアの侵攻による負傷者はこれまで1115人、そのうち子どもは33人にのぼると発表した。負傷者のうち198人(子ども3人)が死亡した。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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