HSBC、融資型排出量削減戦略の最新ステップ発表

世界的な銀行・金融サービス企業であるHSBC(エイチエスビーシー)ホールディングスは2月、炭素集約型の石油・ガスおよび電力・公公益事業分野に対する新たな融資による排出量削減目標を発表した。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

削減目標は、石油・ガス部門は絶対排出量34%削減、電力・公益事業分野は排出量原単位75%削減であり、同行の融資型排出量削減戦略の最新ステップである。

融資による排出量削減目標は、スコープ1、2、3の排出量を含んでいる。

目標設定方法は、NZBAやFinancial Services Task Force(FSTF)のガイダンスを利用している。

NZBAはNet-Zero Banking Allianceの略称で、2050年までに投融資ポートフォリオにおけるカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を目指す銀行間の国際的な連合であり、2021年4月に発足した。
日本企業では、野村ホールディングス、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、三井住友トラスト・ホールディングス、三菱UFJフィナンシャル・グループが加盟している。

HSBCは、イギリス、ロンドンに本社を置く世界最大級のメガバンクであり、1865年に香港で創設された香港上海銀行を母体として1991年に設立された。

同行は2021年12月、EUおよびOECD市場で2030年までに、全世界で2040年までに、石炭火力発電と火力発電所採掘への融資を段階的に廃止する計画を発表した。

更に鉱業・アルミニウム・セメント・鉄鋼・自動車・航空・船舶の輸送など、他の排出集約型セクターについても目標の開示を約束した。顧客と協力し、科学的根拠に基づく移行計画を策定していくと強調した。

同行は、再生可能エネルギーや低排出電力源への投資と資金調達を拡大している。具体的には「直接空気捕獲」「クリーン水素」「長期のエネルギー貯蔵」「持続可能な航空燃料」だ。

HSBCは併せて、石油とガス、電力と公益事業の2つの排出集約型セクター内でポートフォリオを再編成する方法を発表した。

方法は、国際エネルギー機関(IEA)の「2050年までの正味ゼロ排出量」シナリオによって設定された経路に準じ、地球温暖化を1.5°C以内に制限するように計算されている。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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