オルタナ68号「戦争と平和と資本主義」(3月31日発売)

●第一特集「戦争と平和と資本主義」

ロシアのウクライナ侵攻は、世界の民主主義と資本主義を大きく揺らがせた。グローバル企業の一部はロシア事業からの撤退をいち早く打ち出したが、ファンドには、ロシアや兵器産業への投資を続ける事例もある。ESGやSDGsの基本理念である「人と地球」を守れるか─。投資する側も企業も、その存在意義を問われている。

[保阪 正康] 民主主義の生育 根本から揺らぐ 

「健全な資本主義」は、「健全な民主主義」が前提だ。しかし、ロシアはウクライナに軍事侵攻し、民主主義の基盤を揺らがせた。昭和史を研究してきたノンフィクション作家の保阪正康さんは「民主主義の生育そのものが根本から問われている」という。

[小宮山 宏] 自律・分散・協調で新産業の創出を 

21世紀の社会は、「地球」「寿命」「知識」の3つの制約を抱えている。小宮山宏・三菱総合研究所理事長は、「これらの新しい制約を克服することは、新産業の創出にもつながる」と説き、日本の新しい資本主義の姿として「プラチナ社会」を提唱する。

[高岡 浩三] 産業の新陳代謝で「平和と成長」を 

元ネスレ日本社長の高岡浩三氏は経済学の権威フィリップ・コトラー氏と分断が加速するグローバル資本主義の問題点を議論していた。平和と経済成長を両立するには、産業の新陳代謝が効果的だと語る。

[澤上 篤人] 「資本家」なき暴走 パーパスを問え 

「さわかみ投信」の創業者・澤上篤人氏は地政学リスクを高め、所得格差を拡大させた背景には「資本家」不在で暴走する強欲資本主義があると指摘する。今こそ事業の存在意義を見直し、世の中に「問え」と言い切る。

[藻谷 浩介] 自然資本の利子で生活の持続性を 

国際情勢が不安定さを増すなかで、資本主義はどうあるべきか。『里山資本主義』の共著者で地域エコノミストの藻谷浩介氏は「循環再生」を軸にした「脱・成長」の資本主義を提唱する。

[佐藤暁子] 世界の「平和」 企業は守れるか 

ロシアのウクライナ侵攻を受け、平和というものがいかに脆く、意識的に、主体的に守っていかなくてはいけないか、多くの人が痛感しているのではないだろうか。ただし、これはウクライナだけで起きている出来事ではない。

[高村 ゆかり] 脱炭素戦略こそエネ自給のカギに 

国際政治が不安定さを増すなか、エネルギー自給型の炭素社会をつくることはレジリエントな社会づくりにつながる。高村ゆかり・東大教授はそのための重要戦略として、「分散化」と「内部化」を挙げた。

[大西 連] 「成長と分配」より「分配と成長」を 

「貧困を社会的に解決する」をミッションに活動してきた認定特定非営利活動法人自立生活サポートセンターもやい(東京・新宿)。大西連理事長は「政府が掲げる『新しい資本主義』に『新しさ』はなく、『成長』に偏っている。まずは低所得者層の底上げが必要だ」と強調する。

大沢 真知子] 「新しい資本主義」 主役は働く個人に 

ワークライフバランスからワークライフシナジーへ。日本の労働市場を長く見つめてきた大沢真知子・日本女子大学名誉教授は、働く個人の気持ちに寄り添うことこそが「新しい資本主義」のカギになると説く。

●第二特集 ウクライナ侵攻も自然エネ政策は不変

ロシアのウクライナ侵攻は、エネルギー安全保障の問題を改めて浮き彫りにした。これを機に、自然エネルギーへのシフトが進むとする一方で、原子力や化石燃料も必要だという声もある。世界と日本が取るべき選択肢とは。自然エネルギー財団の大林ミカ事業局長に聞いた。

●トップインタビュー

永原 範昭[フィンエアー 日本支社長]航空も化石燃料を使わない時代へ

航空大手のフィンランド航空(フィンエアー)が、2045年までに「カーボンニュートラル」を表明した。燃料消費が少ない航空機エアバスA35Oを導入するほか、持続可能な燃料(SAF)への代替で実現を目指す。欧州では短距離便の廃止も進める。永原範昭・フィンエアー日本支社長に脱炭素戦略を聞いた。

マーティン・パーソン[ボルボ・カー・ジャパン 社長]「脱炭素」はWHYからHOWへ

ボルボは、2030年までに全世界で販売する乗用車をすべてEV化する。2040年には、製造も含めた全行程でカーボンニュートラルを目指す。HEVなどと両天秤を掛ける日本メーカーとは一線を画し、EV一本に舵を切った。その勝算を同社日本法人のマーティン・パーソン社長に聞いた。

セイコーエプソン[瀬木 達明 取締役常務執行役員/木村 勝己 部長]日本最速で「電力100%再エネ化」

セイコーエプソンは2021年11月、国内拠点で使用する電力の100%を再生可能エネルギーに切り替えた。国内の製造業としては最速だ。23年中には、全世界の拠点で100%切り替えを目指す。スピード感ある再エネシフトをどうやって可能にしたのか。担当の瀬木達明常務と、木村勝己部長に聞いた。

●第三特集 脱炭素目標は「2040年より前」に

パリ協定の「1.5度目標」を達成するために、「2050年までに温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロ」という標準目標を前倒しする企業の動きが出てきた。アストラゼネカが「2025年までに事業所での排出ゼロ、30年までにバリューチェーン全体でゼロ」という新目標を打ち出した。マイクロソフトや花王、NTTなども追走する。

●第四特集 「原発はクリーン」 実は高いハードル

欧州委員会は「EUタクソノミー」に原子力と天然ガスでの発電を含める方針を示し、夏までの法制化に動く。原発は温室効果ガスを排出しないが、使用済み核燃料の処分場の問題や、ロシアによるウクライナ原発の占拠など、リスクは大きい。原発は本当に「クリーン」なのか。

●コラム

オルタナティブの風  田坂 広志「戦略的反射神経」の時代

エゴからエコへ  田口 ランディ 教育の平等なくして民主主義なし

モビリティトピックス  島下 泰久

モビリティの未来  清水 和夫 自動車3原則の大転換期

農業トピックス  オルタナ編集部

日本農業 「常識」と「非常識」の間  徳江 倫明 従来の延長線上に未来はない

林業トピックス  オルタナ編集部

「森を守れ」が森を殺す  田中 淳夫 林業で誰が分配を担うのか

漁業トピックス  瀬戸内 千代

人と魚の明日のために  井田 徹治 「公正な移行」で構造転換を

フェアトレードトピックス  潮崎 真惟子

フェアトレードシフト  潮崎 真惟子 資本主義の「その先」と平和

ファンドレイジングトピックス  宮下 真美

社会イノベーションとお金の新しい関係  鵜尾 雅隆 寄付は平和を求める市民の「意思」

廃棄物・静脈物流トピックス  エコスタッフ・ジャパン

論考・サーキュラーエコノミー  細田 衛士 私益と公益の両立した経済を

欧州CSR最前線  下田屋 毅 ステークホルダーと資本主義

CSRトピックス CSR48

「こころざし」の譜 希代 準郎 兄のペイ・フォワード

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #SDGs

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