大手スーパーの「エシカル通信簿」、低評価はバロー

国内非営利組織のネットワーク「消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワーク(SSRC)」はこのほど、第5回「企業のエシカル通信簿」(2021年度)の結果を発表した。スーパーマーケット業界について、「サステナビリティ体制」など7項目の評価を行った。オルタナが独自に合計点を出し、最も高かったのはイオンとセブン&アイの2社で、最も低かったのはバローだった。(オルタナ副編集長=山口勉)

2021年度の調査は5回目で、大手スーパー6社の「エシカル度」を調査した。

今回はスーパーマーケットを対象に詳細な調査を行い、レイティングを行なった。

エシカル通信簿は2016年から始まり、企業の「サステナビリティ体制」「消費者の保護・支援」「人権・労働」「社会・社会貢献」「平和・非暴力」「アニマルウェルフェア」「環境」の7分野について調査・評価するものだ。

これまでに10業種の大手48社を対象に調査を行った。食品加工、アパレル(第1回)、化粧品、宅配、コンビニ(第2回)などを調査し、前回の第4回は大手カフェチェーン5社と大手飲料メーカー5社を対象に行なった。2020年度は調査票見直しのため一旦休止した。

例年2業種以上を対象としていたが、2021年度は調査票が大幅に変更になり、1業種に絞った。消費者に最も身近な業種であることからスーパーマーケットを選んだ。売上高などに基づき、大手6社を調査対象にした。

対象となった6社は次のとおり。(法人格は省略)
アークス、イオン、イズミ、セブン&アイホールディングス、バローホールディングス、ライフコーポレーション。

調査は公開情報の確認や、メールによる質問で行なった。調査には27人が参加した。

そのうち、回答があったのはイオン、イズミ、セブン&アイの3社。ライフからは事情により回答しないとの連絡があり、他の2社は回答がなかった。

SSRC事務局の下村委津子さんは、「各社とも、各項目に熱心に取り組んでいることが分かった。ただ調査項目に照らすと、得点につながりにくいケースもあった。これからは、企業単体だけでなく、NPOとの協働など、社会課題解決に向けた新しいスタイルも取り入れてもらいたい」と今後に期待する。

今回の6社の得点(評価)は次の通り。数字は左から「サステナビリティ体制」「消費者の保護・支援」「人権・労働」「社会・社会貢献」「平和・非暴力」「アニマルウェルフェア」「環境」の7項目を指す。なお、SSRCは各企業の合計点を公表していないが、オルタナ編集部が独自に合計点を出した。

アークス     1、4、2、4、1、1、1(合計14)
イオン     9、8、8、7、2、1、5(合計40)
イズミ     4、3、2,3、1、1、2(合計16)
セブン&アイ   9、8、8、8、1、1、5(合計40)
バロー     1、2、2、1、1、1、2(合計10)

ライフ     1、3、2、2、1、1、2(合計12)

今回の調査で、合計得点が最も高かったのは、イオンとセブン&アイの2社だった。最も点数が低かったのはバローの10点だった。得点の差が大きかったのは、「サステナビリティ体制」「消費者の保護・支援」「人権・労働」「社会・社会貢献」の4項目だ。

特に差が開いた「サステナビリティ体制」は、イオンとセブン&アイが9点と高かったが、アークス、バロー、ライフは1点と最低ランクにとどまった。

同体制の評価は、「サステナビリティに関する方針を定めているか」「SDGsなどに関する従業員教育を行っているか」「サプライチェーンの調達基準があるか」「サプライヤーや従業員からの苦情申し立てや救済制度があるか」など11項目で行った。

一方で、「平和・非暴力」「アニマルウェルフェア」「環境」の3項目については、各社とも得点が低く、業界を通じての課題が浮き彫りになったかたちだ。

SSRC共同代表幹事の山岡万里子さんは、「この調査は企業自身に、自分たちの取り組みには何が足りていて何が足りていないのか、などの示唆を与えるもの。今回対象となったスーパーマーケット業界の6社はもちろんだが、6社以外の事業者、あいるいはそれ以外の業界の企業にも、ぜひこの結果に関心を持っていただければ」と願いを語った。

今回の結果発表会はYouTubeでも公開している。 
企業のエシカル通信簿 第5回結果発表会

この調査に参加したメンバーの所属団体は下記の18団体(27人)。
・消費者市民社会をつくる会(ASCON)
・サステナビリティ消費者会議
・福島県消費者団体連絡協議会
・消費生活実践グループin秋田
・福知山環境会議
・環境市民
・フェアトレード・サマサマ
・日本フェアトレード・フォーラム
・ノット・フォー・セール・ジャパン(NFSJ)
・フェアトレード北海道
・ウータン・森と生活を考える会
・FoE Japan
・アニマルライツセンター
・中野・環境市民の会
・えこひろば
・野生生物保全論研究会
・みどりの市民
・くまもと未来ネット

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山口 勉(オルタナ副編集長)

大手IT企業や制作会社で販促・ウェブマーケティングに携わった後独立。オルタナライターを経て2021年10月から現職。2008年から3年間自転車活用を推進するNPO法人グリーンペダル(現在は解散)で事務局長/理事を務める。米国留学中に写真を学びフォトグラファーとしても活動する。 執筆記事一覧

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